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配管分岐の使い分け決定版!サイズ・圧力・施工性で選ぶ3ステップ選定フロー

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「チーズ、ボス、オーレット…種類が多くて、今の現場にどれが最適か迷っていませんか?」

配管設計の現場では、たった一箇所の分岐方法の選定ミスが、施工不可による手戻りや、最悪の場合は漏洩事故などの重大なトラブルに繋がるリスクがあります。

しかし、教科書には「継手の種類」は載っていても、「現場ごとの具体的な選び方」までは詳しく書かれていないことがほとんどです。

実は、配管分岐の最適解は、「サイズ・圧力・施工性」の3つの要素を確認するだけで、論理的に決めることができます。

この記事では、配管設計・施工管理技士として20年の現場経験を持つ私が体系化した、迷いを断つための「3ステップ選定フロー」を解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは自分の現場条件にベストな継手と溶接方法を即断し、自信を持って図面を描けるようになっているはずです。

なぜ「なんとなく」で分岐継手を選んではいけないのか?

私も新人の頃、上司に「なんでここはボスにしたんだ?」と聞かれ、答えに詰まって現場で立ち尽くした経験があります。

当時は「なんとなく、チーズが入らなそうだったから」という曖昧な理由で選定していました。

しかし、ある時、私が「とりあえずチーズ」で設計した配管が、現場で大きな問題を引き起こしました。

既存配管との取り合いが悪く、溶接工から「こんな狭い場所で裏波溶接なんてできるか!」と怒鳴られてしまったのです。

結局、設計変更と再製作で工期が遅れ、多くの人に迷惑をかけました。

配管分岐の選定を誤ると、単に施工がしにくいだけでなく、応力集中による亀裂や、溶接欠陥による漏洩といった、プラントの安全を脅かす事故に直結します。

特に高圧ラインや振動がある箇所では、「なんとなく」の選定は命取りになります。

だからこそ、私たち設計者は、「なぜその継手を選んだのか」を、安全性と施工性の両面から論理的に説明できる必要があります。

次の章で、そのための明確な基準をお伝えします。

【図解】迷いを断つ!配管分岐の「3ステップ選定フローチャート」

配管分岐の選定において、最も重要なのは「優先順位」です。

あれこれ悩む前に、以下の3つのステップを順番に確認していけば、自動的に最適解にたどり着けるようになっています。

ここで重要なのは、「チーズ(Tee)」と「ボス・オーレット」は、優先・代替の関係にあるということです。

基本はチーズを最優先し、それが使えない場合にボスやオーレットという代替手段を検討します。

 

step
1
規格品(チーズ)はあるか?

まず最初に検討すべきは、JIS規格(JIS B 2301等)に適合する「チーズ(Tee)」が存在するかどうかです。

チーズは流体抵抗が少なく、応力集中も緩和される最も理想的な形状をしています。

母管と同径の分岐、あるいは規格範囲内の異径分岐であれば、迷わずチーズを選定してください。

step
2
圧力と強度は?

チーズの規格がない場合(例:大口径母管から極小口径の分岐など)や、既存配管からの分岐でチーズを割り込ませるのが困難な場合は、母管に直接溶接するタイプの継手を検討します。

ここで、「ボス(Boss)」と「オーレット(Olet)」は、圧力と強度によって使い分けます。

  • 高圧・振動あり: 肉厚でR加工(母管に沿う形状)が施されたオーレットを選びます。
  • 低圧・静的: コストが安く一般的なボスを選びます。

step
3
溶接仕様は?

最後に、継手とパイプの接続方法を決定します。

  • 50A以下: 施工が容易な差込み溶接(Socket Weld: SW)が一般的です。
  • 65A以上: 強度と信頼性が高い突き合わせ溶接(Butt Weld: BW)を採用します。

ポイント

【結論】: 迷ったら必ず「チーズ」から検討をスタートしてください。

なぜなら、多くの人がいきなり「ボスでいいか」と安易に決めがちですが、ボスは母管への穴あけ加工精度や溶接技量に品質が左右されやすいからです。

チーズは製品として品質が保証されているため、設計の信頼性が最も高くなります。この基本原則を忘れないでください。

チーズ・ボス・オーレット…各継手の特徴と「現場の使い所」

前章のフローチャートで選定した各継手について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく比較します。

特に、ボスとオーレットは競合する製品ですが、その性能とコストには明確な違いがあります。

 配管分岐工法・継手の比較

 

工法・継手名コスト強度・信頼性施工難易度推奨シーン特徴
チーズ (Tee)最優先 (新設・改造問わず)流体特性が良く、応力集中が少ない。JIS規格品。
ボス (Boss)低圧・小口径 (40A以下)安価だが、母管への穴あけと溶接に技量が必要。
オーレット (Olet)高圧・振動・重要保安ボスより肉厚で、母管との接続部がR形状で補強されている。
直付け (Branch)最安低 (危険)原則禁止 (ドレン等の一部例外のみ)母管に穴を開けてパイプを直接溶接。強度が著しく落ちる。

チーズ (Tee)

最も基本的かつ信頼性の高い継手です。

流体の流れがスムーズで、圧力損失が少ないのが特徴です。

現場の使い所: スペースが許す限り、まずはこれを採用します。

既存配管の改造でも、一度配管を切断してチーズを挿入できるなら、それがベストです。

ボス (Boss) / ハーフカップリング

片側がソケット(またはねじ)、もう片側が溶接端となっている継手です。

現場の使い所: 計器の取り出し口や、ドレン・ベント(空気抜き)など、小口径(一般的に40A以下)の分岐によく使われます。

ボスはオーレットに比べて肉厚が薄いため、高圧ラインには向きません。

オーレット (Olet) / ウェルドレット

ボスの強化版とも言える継手です。

母管に接する面が、母管の外径に合わせたカーブ(R加工)になっており、溶接部の応力集中を緩和する設計になっています。

現場の使い所: 高圧ガス配管や、ポンプ周りなど振動が発生する箇所の分岐に使用します。

オーレットはボスよりも高価ですが、安全性が必要な箇所ではコストを惜しまず採用すべきです。

設計者が知っておくべき「溶接と施工」のリスク管理

図面上では完璧な選定に見えても、現場で施工不良が起きれば意味がありません。

特に、差込み溶接(SW)と突き合わせ溶接(BW)は、それぞれ特有の施工リスクを持っています。

これらを理解し、図面に適切な注記を入れることが、トラブル回避の鍵です。

差込み溶接 (SW) の「底付き」リスク

50A以下の小口径で多用される差込み溶接ですが、最大の弱点は「底付き」です。

パイプを継手の奥まで突き当てた状態で溶接してしまうと、溶接熱や流体温度による熱膨張でパイプが伸びた際、逃げ場がなくなり、溶接部に亀裂が入る(割れる)事故が発生します。

これを防ぐため、施工時には必ずパイプ先端と継手の底の間に約1.6mm程度の隙間(ギャップ)を設ける必要があります。

ポイント

【結論】: 差込み溶接の箇所には、図面に必ず「施工時、隙間確保のこと」と注記を入れてください。

なぜなら、熟練工は言われなくても隙間を空けますが、経験の浅い作業者は突き当てて溶接してしまうことがあるからです。

この一行の注記があるだけで、万が一のトラブルの際に設計者の意図(正しい指示)を証明できます。

突き合わせ溶接 (BW) のコストと技量

65A以上や重要保安部位で採用される突き合わせ溶接は、完全溶け込み溶接となるため強度は最強です。

しかし、配管の端部を斜めに削る「開先加工」が必要であり、配管内面に溶接ビードを出す「裏波溶接」には高度な職人技が求められます。

突き合わせ溶接は差込み溶接に比べて施工コストと時間が大幅にかかることを認識し、過剰スペックにならないよう注意が必要です。

火気が使えない場所での「メカニカル継手」

改修工事などで火気使用が制限される場合や、工期を短縮したい場合は、ステンレス配管において「メカニカル継手(プレス式など)」が有効な選択肢となります。

これらはステンレス協会規格(SAS 322)などで性能が規定されており、溶接に代わる信頼性の高い工法として認められています。

ステンレス鋼管のメカニカル管継手は、給水、給湯、冷温水、冷却水などの配管に広く使用されており、その性能はSAS 322(一般配管用ステンレス鋼鋼管の管継手性能基準)で規定されています。

出典: ステンレス協会 - 配管システム普及委員会

よくある質問 (FAQ)

Q: 母管に直接穴を開けてパイプを溶接(直付け)してはいけませんか?

A: 原則として禁止です。

補強のない「直付け(ブランチ)」は、開口部周辺に応力が集中しやすく、強度が著しく低下します。

大気開放のドレン配管など、圧力がかからない一部の例外を除き、必ずチーズ、ボス、オーレットなどの適切な継手を使用してください。

Q: ハーフカップリングとボスの違いは?

A: 基本的に同じものを指すことが多いですが、形状に微妙な違いがあります。

一般的に「ハーフカップリング」はフルカップリング(ソケット)を半分に切断した形状を指し、「ボス」はタンクや母管への溶接用に端部が加工された専用品を指すことが多いです。

機能的にはほぼ同等ですが、購入時はメーカーのカタログ寸法(特に高さと肉厚)を確認してください。

まとめ:根拠のある図面は、現場の安全を守る

配管分岐の選定は、決して「なんとなく」で行ってはいけません。今回ご紹介した3つのステップをもう一度確認しましょう。

  1. 規格確認: まずはチーズが使えるか確認する。
  2. 圧力・強度: 規格外なら、高圧・振動箇所にはオーレット、それ以外はボスを選ぶ。
  3. 溶接仕様: 50A以下は差込み溶接(隙間管理必須)、65A以上は突き合わせ溶接とする。

このルールに従えば、安全性、施工性、コストのバランスが取れた最適な設計が可能になります。

根拠のある図面は、現場の作業者を迷わせず、プラントの安全を守り、そして何よりエンジニアとしてのあなたの信頼を築きます。

ぜひ、次の設計からこのフローを実践してみてください。

📚 参考文献

主な参考文献:

  • JIS B 2301:2013 ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手
  • JIS B 2311:2015 一般配管用鋼製突合せ溶接式管継手
  • ステンレス協会 (JSSA) - 一般配管用ステンレス鋼鋼管の管継手性能基準 (SAS 322)
  • この記事を書いた人

KAIJI

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