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スプリングハンガーとコンスタントハンガーの違いは?変位50mm・変動率25%の選定基準

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配管の熱変位量が50mmを超えたり、荷重変動率が25%に近づいたら、コストを理由にスプリングハンガーで無理をせず、コンスタントハンガーへの切り替えを検討すべきです。

なぜなら、この「際(きわ)」の判断が、配管破損という重大事故を防ぐための最も重要な分岐点だからです。

私も若い頃、コスト削減のためにスプリングハンガーでギリギリの設計を行い、試運転で冷や汗をかいた経験があります。

その経験から、安全マージンを確保することの重要性を痛感しました。この知見が、あなたの設計判断の一助となれば幸いです。

はじめに

配管設計において、「スプリングハンガー」と「コンスタントハンガー」、どちらを選ぶべきか迷う場面は少なくありません。

特に、配管の熱変位量が大きい箇所や、荷重変動が予想される箇所では、その判断がプラント全体の安全性に直結します。

この記事では、配管設計の経験を持つシニアエンジニアである私が、長年の現場経験と技術的知見に基づき、この二つのハンガーの選定基準を明確に解説します。

特に、多くの設計者が直面する「変位量50mm」「荷重変動率25%」という具体的な数値を軸に、コストと安全性のバランスをどう取るべきか、その技術的根拠を徹底的に掘り下げていきます。

この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持ってハンガーを選定し、その判断根拠を関係者に明確に説明できるようになっているはずです。

そもそもなぜ使い分ける?配管を守る「荷重変動率」の正体

配管設計において、ハンガーの選定は単なる「重さ」の問題ではありません。

配管が温度変化によって伸縮する「熱変位」と、それに伴ってハンガーにかかる「支持力の変化」、すなわち「荷重変動」を正確に理解することが極めて重要です。

スプリングハンガーの「宿命」:支持力の変化

スプリングハンガーは、その名の通り、内部のスプリング(ばね)の伸縮によって配管の変位を吸収します。

これはフックの法則(F=kx)が示すように、ばねの伸び(変位 x)に比例して支持力 F が変化することを意味します。

この支持力の変化は、配管系に予期せぬ「転移荷重」として作用し、特に配管に接続されている機器のノズル部分などに過大な負荷を与える可能性があります。

最悪の場合、配管の破損や機器の故障につながることも考えられます。

コンスタントハンガーの役割:支持力を「一定」に保つ

一方、コンスタントハンガーは、独自のカム機構やてこ作用を利用することで、配管が動いても支持力がほとんど変化しない(変動率が極めて小さい)ように設計されています。

これにより、配管や機器ノズルにかかる荷重を一定に保ち、熱変位による応力集中リスクを大幅に低減できます。

プラントの安全性、特に高温高圧の流体を扱う設備や、精密機器に接続される配管においては、この「支持力の一定性」が極めて重要な設計要件となります。

迷ったらここを見ろ。コンスタント採用を決める「2つの絶対基準」

では、具体的にどのような場合にコンスタントハンガーの採用を検討すべきなのでしょうか?

実務上、以下の二つの基準が重要な判断材料となります。

基準A:荷重変動率 25%以内(MSS SP-58規格)

配管支持装置に関する国際的なデファクトスタンダードである MSS SP-58 (Manufacturers Standardization Society) では、可変スプリングハンガーの荷重変動率は最大25%に制限されるべきであると規定されています。

Variable spring hangers shall be designed to indicate a maximum variation of 25 percent from the load indicated at the indicated travel.

出典: MSS SP-58 - Pipe Hangers and Supports - Materials, Design, Manufacture, Test, and Recommend Practice for Ordinary Conditions (Section 4.1.3)

これは、スプリングハンガーを使用する場合、その支持力の変化量が、初期荷重(プリセット荷重)に対して25%を超えないように設計・選定する必要があることを意味します。

もし計算上、あるいは実際の運転条件でこの25%を超える変動が見込まれる場合は、スプリングハンガーでの対応は困難であり、コンスタントハンガーの採用を強く推奨します。

なぜ25%なのか? これは、配管や機器ノズルが許容できる応力、そしてスプリング自体の特性や製造公差などを総合的に考慮した、安全サイドでの実務的な値と言えます。

MSS SP-58は何の規格?

MSS SP-58は、配管サポート(Pipe Supports)に関する米国の標準規格です。

正式には “Pipe Hangers and Supports – Materials, Design and Manufacture” を指します。

配管を支える金物(サポート・ハンガー類)の種類・形状・材料・用途を標準化した規格です。

主に次の点が整理されています。

  • 配管サポートの種類(型式)

  • 各サポートの基本構造・形状

  • 使用される材料

  • 想定される使用用途(天井吊り・床置き・壁支持など)

基準B:垂直変位量 50mm〜60mm(メーカー推奨値)

荷重変動率と並んで、もう一つの重要な判断基準となるのが「熱変位量」です。

多くの主要メーカーは、スプリングハンガーが安全に対応できる垂直変位量の目安を示しています。

  • Witzenmann Japan によると、スプリングハンガーの適用範囲は最大60mm程度までとされています。
  • 株式会社山下製作所 の技術資料では、「50mm以上の大きな変位量吸収に最適」としてコンスタントハンガーが定義されています。

これらのメーカー推奨値は、前述の「荷重変動率25%」という規格値を満たしつつ、現実的な配管設計で想定される変位量をカバーするための、経験則に基づいたものです。

したがって、配管の熱膨張による垂直方向の変位量が50mm〜60mmを超えると予想される場合は、スプリングハンガーでの設計が難しくなり、コンスタントハンガーの検討が必要となります。

構造とコストの現実。上司を説得するための比較データ

「コンスタントハンガーはスプリングハンガーの数倍、場合によっては10倍以上の価格になる」というのは、多くの現場で共通認識されている事実です。

しかし、その価格差には明確な理由があり、決して不当なものではありません。

コンスタントハンガーの「一定支持力」の秘密

コンスタントハンガーの支持力が一定に保たれるのは、その内部構造にあります。多くの場合、スプリングと連動したカム機構や、てこ(レバー)の原理を利用した複雑なメカニズムが採用されています。

これにより、配管の変位に応じてスプリングの伸縮量が変化しても、その力を増幅・減衰させることで、結果的に出力される支持力をほぼ一定に保つことができるのです。

この精密な機構を実現するためには、高度な設計技術と精密な部品加工が必要となり、それがコストに反映されています。

コストと安全性のトレードオフ:保険としての投資

スプリングハンガーは構造が比較的単純で、コストも抑えられます。

しかし、前述の通り、支持力が変動するという本質的な特性を持っています。

一方、コンスタントハンガーは高価ですが、支持力が一定であるという、プラントの安全稼働において非常に価値の高い機能を提供します。

したがって、コンスタントハンガーのコストは、単なる「部品代」ではなく、「配管破損リスクを低減し、長期的な安全稼働を保証するための保険」と捉えるべきです。

特に、以下のようなケースでは、コンスタントハンガーへの投資は十分に正当化されます。

  • 機器ノズルへの影響が大きい場合: タービン、ポンプ、熱交換器などの精密機器に接続される配管。
  • 配管系の剛性が高い場合: 熱変位が集中応力となりやすい。
  • 運転停止による損害が大きいプラント: 化学プラント、発電所など。

上司やクライアントに対しては、単に「高いからダメ」という意見に流されるのではなく、MSS規格やメーカー推奨値を根拠に、「この条件ではスプリングの変動リスクが高く、コンスタントによる支持力一定化が安全上必須である」という技術的な説明を行うことが重要です。

 スプリングハンガー vs コンスタントハンガー 比較

項目スプリングハンガー (Variable Spring Hanger)コンスタントハンガー (Constant Hanger)
構造単純なスプリング機構カム機構、てこ作用などを利用した複雑な機構
支持力の変動あり(荷重変動率が重要)ほぼなし(一定支持力)
許容変位量小〜中程度(一般的に50mm未満)大(50mm以上にも対応可能)
荷重変動率最大25%(MSS SP-58規格)ほぼ0%
コスト低い高い(数倍〜10倍以上)
主な用途熱変位量が少なく、荷重変動が許容範囲内の配管熱変位量が大きい、機器ノズル接続部、安全性が最優先される配管
設計上の注意点変位量と荷重変動率の計算・管理初期荷重設定、ストローク範囲の確認

現場で役立つQ&A (FAQ)

Q: 計算上、荷重変動率が25%ギリギリ(例えば24%)の場合、スプリングハンガーで対応しても問題ないでしょうか?

A: 基本的にはMSS SP-58規格の範囲内ですので、設計上は問題ないと判断されることが多いです。しかし、現場エンジニアとしては、以下の点を考慮することをお勧めします。

  1. 施工誤差: 実際の配管の取り付け精度や、運転中のわずかな振動など、計算には現れない要因で変位量が想定より大きくなる可能性があります。
  2. 機器ノズルの許容荷重: 配管が接続されている機器(タービン、ポンプなど)側のノズル許容荷重に余裕があるか、再度確認することが重要です。
  3. メーカーへの確認: 不安な場合は、ハンガーメーカーに具体的な条件を伝え、推奨を確認するのが最も確実です。

コスト削減のプレッシャーがある中で、安全マージンをどこまで取るかは常に難しい判断ですが、「ギリギリ」はリスクを伴うことを念頭に置くべきです。

Q: コンスタントハンガーのメンテナンスについて、スプリングハンガーとの違いはありますか?

A: はい、コンスタントハンガーは内部機構が複雑なため、スプリングハンガーと比較して、より注意深いメンテナンスが求められる場合があります。

  • 可動部の確認: カムやリンク機構などの可動部に、錆びや異物の噛み込みがないか定期的に目視点検することが重要です。
  • 初期荷重の確認: 長期間の使用により、初期荷重がずれる可能性もゼロではありません。必要に応じてメーカーの指示に従い、荷重の確認や調整を行うことが推奨されます。

スプリングハンガーも定期的な点検は必要ですが、コンスタントハンガーは特に「動きのスムーズさ」が性能維持の鍵となります。

まとめ & 行動喚起

スプリングハンガーとコンスタントハンガーの選定は、単なる部品選択以上の意味を持ちます。

それは、プラントの安全性と経済性のバランスを最適化するための、エンジニアとしての重要な判断です。

今回解説した「荷重変動率25%」と「変位量50mm」という二つの基準は、その判断における強力な羅針盤となるはずです。

これらの数値を根拠に、自信を持って設計を進めてください。

「際(きわ)」の判断こそ、エンジニアの腕の見せ所です。 コストと安全性の間で迷ったとき、この記事があなたの判断を支える一助となれば幸いです。

[参考文献リスト]

 

  • この記事を書いた人

KAIJI

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