スプリングハンガーとコンスタントハンガーの違いが曖昧なままだと、支持条件の判断に迷い、荷重変動の見落としがトラブルや手戻りにつながります。
本記事では「スプリングハンガー コンスタントハンガー 違い」を軸に、支持特性・適用条件・使い分け基準、調整や施工の注意点まで実務目線で整理します。
配管支持設計の基本(荷重・変位・許容範囲)を踏まえて解説するので、客先説明や社内レビューに使える根拠も身につきます。
目次
スプリングハンガーとコンスタントハンガーの違い

スプリングハンガーとコンスタントハンガーは、どちらも配管の自重や運転荷重を支える装置ですが、支持の考え方は大きく異なります。
ここでは、設計・選定で最も重要となる「荷重の扱い」と「適用できる配管条件」という2つの観点から違いを整理します。
荷重変動に対する支持特性が異なる
スプリングハンガーは、配管の上下変位に応じて支持荷重が変化する構造です。
ばねの伸び縮みにより荷重を受けるため、運転時と停止時で支持力が変わります。
変位量が小さい配管では、この荷重変動が問題になりにくく、構造も比較的シンプルです。
一方、コンスタントハンガーは、リンク機構を用いて配管が動いても支持荷重をほぼ一定に保ちます。
変位が大きい場合でも、配管やノズルに余計な力を与えにくい点が特徴です。
荷重変動を許容できるかどうかが、両者を分ける大きな判断軸になります。
適用できる配管条件が異なる
スプリングハンガーは、熱膨張量が小さく、荷重変動率を一定範囲に収められる配管に向いています。
例えば、比較的短い配管や中低温ラインでは採用しやすい支持方式です。
対してコンスタントハンガーは、高温配管や長尺配管など、上下変位が大きくなる条件で効果を発揮します。
特に、機器ノズルに接続する配管では、荷重変動を抑えることが重要になります。
配管条件を正しく把握せずに選定すると、応力増大や機器損傷につながるため注意が必要です。
スプリングハンガーとは何か

スプリングハンガーは、配管の熱膨張による上下変位を吸収しながら荷重を支持する装置です。
固定支持では対応できない配管に用いられ、設計では役割や構造を正しく理解することが重要になります。
スプリングハンガーの基本的な役割
スプリングハンガーの役割は、配管の自重や流体重量を支えつつ、運転時の変位を許容することです。
配管は温度変化によって伸び縮みするため、完全に固定すると大きな応力が発生します。
スプリングハンガーを使うことで、上下方向の動きをばねで受け止め、配管に過度な力が集中するのを防げます。
特に、建屋上部から吊る配管では、支持点に柔軟性を持たせることで全体の応力バランスが安定します。
配管を「支えながら逃がす」という点が、この装置の本質的な役割です。
スプリングハンガー構造の仕組み
スプリングハンガーは、コイルばねとケース、ロードロッドなどで構成されています。
配管が下がるとばねが伸び、上がると縮むことで荷重を受け持ちます。このとき、ばね定数に応じて支持力が変化するのが特徴です。
構造自体はシンプルですが、設定荷重や変位量を誤ると、想定以上の荷重変動が生じます。
例えるなら、体重計の上に立ったまま上下するようなもので、位置によって表示が変わるイメージです。
構造を理解することが、正しい選定の第一歩になります。
スプリングハンガーを配管に使う目的
スプリングハンガーを使う目的は、配管応力の低減と設備の長寿命化です。
固定支持だけで配管を支えると、熱膨張による力が継手や機器ノズルに集中します。
その結果、漏れや損傷が起こりやすくなります。
スプリングハンガーを適切に配置することで、配管全体で変位を分散でき、局所的な負担を抑えられます。
設計段階で目的を明確にしておくと、不要な過剰設計や支持不足を防ぎやすくなります。
スプリングハンガーの使い方と設計時の考え方

スプリングハンガーは、選定だけでなく使い方や調整方法まで含めて設計品質が決まります。
ここでは、実務で押さえておきたい代表的な使い方と、設計・施工時に意識すべき考え方を整理します。
スプリングハンガーの代表的な使い方
スプリングハンガーは、主に配管の中間部や機器近傍の吊り支持として使われます。
固定支持では応力が集中しやすい箇所に設けることで、熱膨張による上下変位を吸収できます。
例えば、高温配管が梁から吊られる場合、全てを固定すると配管が逃げ場を失います。
そこで一部をスプリング支持に切り替えると、配管全体の動きが滑らかになります。
配置の考え方は、応力解析結果をもとに「動かしたい点」を見極めることが重要です。
単に吊れるから使う、という判断は避ける必要があります。
スプリングハンガー調整の基本手順
スプリングハンガーは、設置後の調整が性能に直結します。
まず、据付時には仮固定状態で配管を支持し、所定の位置に配管を収めます。
その後、設計荷重に合わせて調整ナットを回し、ばねを所定の初期位置に設定します。
運転開始後には、実際の変位量や支持状態を確認し、必要に応じて微調整を行います。
ばね位置がずれたまま放置すると、想定外の荷重がかかる恐れがあります。
調整は一度で終わりではなく、確認まで含めて一連の作業と考えることが大切です。
スプリングハンガー取扱説明書で確認すべき点
取扱説明書には、設計や施工に直結する重要な情報が記載されています。
特に確認したいのは、許容変位量、荷重調整範囲、仮固定方法です。
メーカーごとに構造や調整手順が異なるため、過去の経験だけで判断すると誤りが生じます。
例えば、仮固定ピンの解除タイミングを誤ると、配管に余計な応力が残ります。
説明書は「施工時の注意書き」ではなく、設計意図を補足する資料として読む姿勢が重要です。
コンスタントハンガーとは何か

コンスタントハンガーは、配管が上下に動いても支持荷重を一定に保つことを目的とした支持装置です。
スプリングハンガーと混同されやすいですが、役割や設計上の考え方は明確に異なります。
ここでは基本から整理します。
コンスタントハンガーの基本的な役割
コンスタントハンガーの役割は、配管の変位量に関わらず、ほぼ一定の支持力を与えることです。
高温配管では、運転時に大きな熱膨張が発生し、支持点が上下に大きく移動します。
このとき支持荷重が変動すると、配管や機器ノズルに余計な力が加わります。
コンスタントハンガーを用いることで、配管が動いても荷重条件を安定させられます。
特に、タービンやポンプなど精密機器に接続する配管では、荷重一定という特性が重要な意味を持ちます。
コンスタントハンガー構造の特徴
コンスタントハンガーは、ばねとリンク機構を組み合わせた構造をしています。
配管が上下に動くとリンクが回転し、ばねの作用点が変わることで支持力を一定に保ちます。
見た目は複雑ですが、動作原理は「てこの力」を利用したものです。
この構造により、変位が大きくても荷重変動を最小限に抑えられます。
一方で、装置自体が大型になりやすく、重量や設置スペースの検討が欠かせません。
構造を理解しておくと、設計時の制約を把握しやすくなります。
コンスタントハンガーが必要になる配管条件
コンスタントハンガーが必要になるのは、熱膨張量が大きく、スプリングハンガーでは荷重変動率が許容範囲を超える配管です。
代表例は、高温蒸気配管や長距離にわたる主幹配管です。
また、機器ノズルに近い支持点では、わずかな荷重変動でも影響が大きくなります。
こうした条件では、支持力を一定に保つことが配管健全性の確保につながります。
単に「高温だから使う」のではなく、変位量と荷重条件を合わせて判断することが重要です。
コンスタントハンガーの調整と設計上の注意点

コンスタントハンガーは高性能な反面、調整や設計条件を誤ると本来の性能を発揮できません。
ここでは、実務で特に重要となる調整の考え方と、設計段階で見落としやすい注意点を整理します。
コンスタントハンガー調整の考え方
コンスタントハンガーの調整は、「設計時に想定した運転状態」を正確に再現することが目的です。
据付時は仮固定状態で配管を支持し、設計荷重に合わせてリンク位置や調整ナットを設定します。
その後、仮固定を解除し、配管が自由に動ける状態を作ります。
運転開始後は、配管の実際の変位が想定通りかを確認します。
ここでズレがあると、荷重一定の前提が崩れます。
調整は一度きりではなく、確認と補正まで含めた作業として捉える必要があります。
荷重一定を維持する仕組み
コンスタントハンガーが荷重を一定に保てるのは、リンク機構によってばねの作用点が変化するためです。
配管が下がるとリンクが回転し、ばねの有効長さが変わります。
その結果、ばね力の変化が相殺され、支持荷重がほぼ一定になります。
これは、シーソーで位置を変えても釣り合いが取れる状態に近い仕組みです。
この構造により、配管や機器に加わる力の変動を抑えられます。
仕組みを理解しておくと、設計説明やトラブル対応がしやすくなります。
設計段階で確認すべき制限事項
コンスタントハンガーには、変位量や設置角度などの制限があります。
許容変位を超えると、リンクが正常に動かず荷重一定が保てません。
また、本体重量が大きいため、建屋側の支持強度も確認が必要です。
さらに、メンテナンススペースを確保しないと、調整や点検が困難になります。
これらを後工程で修正するのは容易ではありません。
設計段階で制限条件を洗い出しておくことが、トラブル防止につながります。
スプリングハンガーとコンスタントハンガーの使い分け基準
両者の違いを理解しても、最終的には「どちらを採用するか」を判断する必要があります。
ここでは、実務で判断軸になりやすい3つの基準を整理し、設計時に迷いにくくする考え方を示します。
①配管の熱膨張量で判断する
使い分けの最も基本的な基準は、配管の上下変位量です。
熱膨張が小さい配管であれば、スプリングハンガーでも荷重変動は限定的です。
反対に、高温・長尺配管では変位が大きくなりやすく、スプリング支持ではばねの伸縮量が増えます。
その結果、支持荷重の変化が無視できなくなります。
こうした条件では、変位が大きくても荷重を一定に保てるコンスタントハンガーが有効です。
まずは解析結果から変位量を把握することが、判断の出発点になります。
②荷重変動率で判断する
次に重要なのが、運転時に発生する荷重変動率です。
スプリングハンガーは構造上、変位に比例して支持力が変わります。
そのため、荷重変動率が許容範囲内に収まるかを確認する必要があります。
許容値を超える場合、配管や機器に余計な力がかかります。
コンスタントハンガーは、この荷重変動を抑えるための装置です。
数値として荷重変動率を比較することで、感覚ではなく根拠を持って選定できます。
③設備重要度で判断する
設備の重要度も、使い分けに影響します。
主要幹線配管や停止が許されない設備では、わずかな荷重変動がトラブルにつながります。
このような場合は、安全側としてコンスタントハンガーを選ぶ判断も合理的です。
一方、影響範囲が限定的な補助配管では、スプリングハンガーで十分なケースもあります。
設備全体への影響度を考慮し、過不足のない支持方式を選ぶことが、設計の質を高めます。
メーカー・カタログ情報の活用方法
スプリングハンガーやコンスタントハンガーは、メーカーごとに仕様や表記が異なります。
カタログを正しく読み取れないと、設計条件に合わない製品を選定する恐れがあります。
ここでは、実務で役立つカタログ活用の視点を整理します。
三和テッキスプリングハンガーカタログの見方
三和テッキのカタログでは、荷重範囲、許容変位、調整量が整理されています。
まず確認したいのは、設計荷重が調整範囲の中央付近に収まるかどうかです。
端に近い設定では、将来の調整余裕がなくなります。
次に、変位量と荷重変動率の関係をチェックします。
図表を読み飛ばさず、実際の配管変位と照らし合わせることが重要です。
品番選定は数字合わせではなく、条件との適合確認が本質になります。
日本発条スプリングハンガーの特徴
日本発条のスプリングハンガーは、ばね性能の安定性とラインナップの広さが特徴です。
荷重区分が細かく設定されているため、設計条件に近い製品を選びやすくなります。
一方で、型式が多いため、構造や調整方法の違いを理解していないと混乱しがちです。
カタログでは、構造図や調整方法の記載を必ず確認します。
ばねメーカーならではの特性を理解すると、選定理由を説明しやすくなります。
メーカー選定時の比較ポイント
メーカーを比較する際は、価格だけで判断しないことが重要です。
確認すべきポイントは、許容変位、調整方法、保守性、納期対応です。
特に、現場調整のしやすさは施工品質に直結します。
また、国内外の規格対応や実績も無視できません。
将来的な交換や追加工事を考えると、継続供給の有無も重要な要素になります。
設計段階で比較軸を明確にしておくと、後工程がスムーズになります。
参考URL
三和テッキ株式会社:https://www.tekki.co.jp/
日本発条 株式会社:https://www.nhkspg.co.jp/
株式会社 山下製作所:https://yamashita-seisaku.co.jp/
設計・選定ミスで起こるトラブル事例
スプリングハンガーやコンスタントハンガーは、選定や設定を少し誤るだけで配管トラブルにつながります。
ここでは実務で起こりやすい代表的なミスを整理し、未然に防ぐ視点を示します。
荷重変動の見落としによる不具合
よくあるのが、熱膨張量は確認しているものの、荷重変動率の評価が不十分なケースです。
スプリングハンガーを採用した結果、運転時に支持荷重が大きく変化し、機器ノズルに想定外の力が加わります。
その影響で、ボルト緩みやフランジ漏れが発生することがあります。
解析結果の変位だけを見るのではなく、支持力がどれだけ変わるかを併せて確認することが重要です。
数値を一段深く見る意識が、トラブル回避につながります。
調整不足による配管応力増大
設計通りに機器を選定しても、調整不足で不具合が生じることがあります。
初期設定がずれたまま運転に入ると、配管が常に引っ張られた状態になります。
その結果、配管応力が想定以上に増大し、長期的に疲労破壊を招く恐れがあります。
特に、仮固定解除の確認漏れは典型例です。
調整作業を施工任せにせず、設計者として確認項目を明確にしておくことが大切です。
まとめ|スプリングハンガーとコンスタントハンガーの違いを理解して正しく使い分ける
スプリングハンガーとコンスタントハンガーの違いは、荷重の扱い方と適用できる配管条件にあります。
熱膨張量、荷重変動率、設備重要度を整理することで、適切な支持方式を選べます。
構造や調整方法まで理解しておくと、設計説明やトラブル対応にも強くなります。
単なる部品選定ではなく、配管全体の健全性を考えた使い分けが重要です。
