「現場のバルブ、どれも同じに見えて混乱する…」3ヶ月前のあなたと同じ悩みを持っていた新人さんへ。
新人の頃、私もそうでしたよ。現場にずらっと並んだ配管とバルブを見て、まるで外国語を浴びせられているような気分でしたよね。でも安心してください。
大事なポイントはたったの2つだけ。この記事を読み終える頃には、斎藤さんのような新人の方も『なるほど、そういうことか!』と、きっと自信が持てるようになりますから。一緒に見ていきましょう。
この記事では、プラント設計者の経験から、どこよりもやさしく「なぜこのバルブが使われるのか?」という理由まで、たくさんの図を使いながら解説します。
読み終える頃には、バルブの基本的な見分け方と役割がわかり、現場で自信を持って先輩の話を聞けるようになります。
目次
まずはこれだけ!バルブの仕事は「仕切る」か「調整する」かの2種類
私が新人によく聞かれる質問が、「バルブの種類が多すぎて、何から覚えればいいか分かりません」というものです。
みんな最初はここで混乱するんですよね。
でも、どんなに複雑に見えるバルブも、その基本的な仕事はたった2種類に分けられます。
それは、
- 流れを完全に仕切る(オン・オフ)か
- 流れの量を調整する(コントロール)か
このどちらかなのです。
一番身近な例でいえば、水道の蛇口が分かりやすいでしょう。
蛇口をひねって水をピッタリ止めたり、全開で出したりするのが「オン・オフ」。
蛇口を少しだけひねって、チョロチョロと水の量を加減するのが「流量調整」です。
現場にある多くのバルブも、このどちらかの仕事、あるいは両方の仕事をこなすために、それぞれ最適な形に進化した結果なのです。
まずはこの大原則を頭に入れておいてください。
【全体像】現場の主役はこの4人!主要バルブの役割マップ

バルブの世界は奥が深いですが、幸いなことに、どんなプラントや工場でも「主役」となるバルブはだいたい決まっています。
まずは、以下の4種類のバルブを覚えれば、現場で見るバルブの7〜8割はカバーできると言っても過言ではありません。
- ゲートバルブ
- グローブバルブ
- ボールバルブ
- バタフライバルブ
そして、この4種類の主役たちは、先ほど説明した「オン・オフ」と「流量調整」という仕事で見事に役割分担されています。
写真と図でスッキリわかる!基本バルブ4種の特徴と見分け方
それでは、4人の主役たち一人ひとりの特徴を、写真とシンプルな構造図で見ていきましょう。
ここでは「①どんな形?」「②仕組みは?」「③得意なこと・苦手なこと」「④現場での使われ方」という順番で解説していきます。
1. ゲートバルブ(仕切弁)
①どんな形?
ハンドルの下に、高さのあるボンネット(蓋)が付いているのが特徴です。ハンドルをたくさん回して操作します。
②仕組みは?
配管に対して垂直に設置された「仕切板(ゲート)」を、ハンドルの回転で上下させて流路を開閉します。
完全に開けると、ゲートが完全に収納されるため、流体の抵抗が非常に少ないのがゲートバルブの構造的な特徴です。
③得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと: 流体を完全に止めたり(全閉)、抵抗なく完全に流したり(全開)する開閉(On/Off)操作。
- 苦手なこと: 中途半端な開度で使う流量調整。
④現場での使われ方
普段は開けっ放しか閉めっぱなしで、あまり頻繁に操作しない配管の元栓などに使われます。
経験からの一言アドバイス
【結論】: ゲートバルブで絶対に流量調整をしてはいけません。
なぜなら、ゲートバルブを半開きの状態で使うと、流体の勢いで仕切板が振動し、「弁座」という重要な密閉部分を傷つけてしまうからです。
一度傷がつくと、完全に閉じても流体が漏れる「シートパス」という不具合の原因になります。これは新人が最もやりがちな失敗の一つなので、くれぐれも注意してください。
2. グローブバルブ(玉形弁)
①どんな形?
本体が丸い球体(Globe)に近い形をしていることから、この名前がついています。ゲートバルブと見た目が似ていますが、本体が丸みを帯びている点で見分けられます。
②仕組みは?
本体の内部で流体の流れをS字に曲げ、その上昇部分に栓(弁体)を押し付けたり離したりすることで流量を制御します。グローブバルブの主な機能が流量調整である理由は、このS字構造にあります。
③得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと: 弁の開度を細かく変えることによる流量調整。
- 苦手なこと: 全開にしてもS字の流路が抵抗になるため、圧力損失が大きくなりがちです。グローブバルブと圧力損失は、原因と結果の関係にあります。
④現場での使われ方
蒸気や水の流量を精密にコントロールしたい場所や、温度・圧力の調整が必要な配管で活躍します。
3. ボールバルブ

引用元:KITZ
①どんな形?
本体にレバーが付いているのが一般的です。このレバーが配管と同じ向きなら「開」、直角なら「閉」と、状態がひと目でわかります。
②仕組みは?
本体の内部に、貫通した穴の開いたボール(玉)が入っています。レバーを90度ひねるだけで、このボールが回転し、穴の向きが変わることで流路を素早く開閉します。
③得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと: レバー操作による素早い開閉(On/Off)。ボールバルブとゲートバルブは、どちらも開閉が主目的という点で類似していますが、ボールバルブの方が操作性に優れます。
- 苦手なこと: 精密な流量調整。
④現場での使われ方
ご家庭のガスの元栓が代表例です。工場では、水や空気、薬品など幅広い流体のラインで、頻繁に開け閉めする場所に使われます。
4. バタフライバルブ(蝶形弁)

引用元:KITZ
①どんな形?
他のバルブに比べて、ウェハーのように非常に薄いのが最大の特徴です。レバー式と、ハンドルを回すギア式があります。
②仕組みは?
配管内に設置された円盤状の弁(ディスク)が、蝶のように90度回転することで流路を開閉します。
バタフライバルブの構造は非常にシンプルです。
③得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと: 薄くて軽いため、狭い場所への設置。大口径の配管にも対応しやすい。ある程度の流量調整も可能。
- 苦手なこと: 高圧の流体や、完全な密閉が求められる場所には不向きな場合があります。
④現場での使われ方
空調設備の冷温水や、大口径の水の配管ラインなどでよく見かけます。
主要バルブ4種の特徴早見表
| 種類 | 得意なこと | 操作方法 | 見た目の特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ゲートバルブ | 全開・全閉 (On/Off) | ハンドルを多回転 | 背が高い | 流量調整はNG |
| グローブバルブ | 流量調整 | ハンドルを多回転 | 本体が丸い | 圧力損失が大きい |
| ボールバルブ | 素早い開閉 (On/Off) | レバーを90度回転 | レバー付き | 精密な調整は不向き |
| バタフライバルブ | 省スペース、簡易な調整 | レバーまたはギア | 本体が薄い | 高圧には不向きな場合あり |
現場で迷わないためのQ&A
最後に、新人さんからよく受ける補足的な質問にお答えします。
Q1: ハンドルの形でバルブの種類は分かりますか?
A1: ある程度の推測は可能です。丸いハンドル(丸ハンドル)は、ゲートバルブやグローブバルブのように多回転させてじっくり操作するものに多く、レバーハンドルはボールバルブのように90度回転で素早く操作するものに多いです。
ただし、例外も多いため、最終的には本体の形状で判断するのが確実です。
Q2: バルブの向きに決まりはありますか?
A2: 非常に重要です。
特にグローブバルブは、S字の流路構造のため、流れの方向が厳密に決まっています。
本体に矢印(→)で流れの方向が示されているので、設置やメンテナンスの際は必ず確認してください。
間違った向きで取り付けると、バルブが正常に機能しないだけでなく、破損の原因にもなります。
Q3: 今回紹介されなかったバルブは覚えなくても大丈夫ですか?
A3: まずは、今回紹介した主役の4種類を完璧にマスターすることを目指してください。
この4つが分かれば、現場での会話のほとんどは理解できるはずです。
業務に慣れてきたら、逆流を防ぐ「チェックバルブ」や、腐食性の高い流体に使われる「ダイヤフラムバルブ」など、脇役たちのことも少しずつ学んでいくと良いでしょう。
まとめ
今日覚えるべきポイントを、最後にもう一度おさらいしましょう。
- バルブの仕事は大きく2種類: 流れを「完全に仕切る(オン・オフ)」か、「流れの量を調整する」か。
- 現場の主役は4種類: 「ゲート」「グローブ」「ボール」「バタフライ」の特徴と役割を理解すれば、大半の場面に対応できます。
この記事をここまで読んだあなたは、もうバルブの基本をしっかり理解できています。
明日から現場でバルブを見たら、「これはオン・オフ用のゲートバルブだな」「これは流量調整用のグローブバルブだ」と考えてみてください。
その小さな気づきが、あなたをプロの保全マンに育ててくれます。応援していますよ。
次のステップとして、配管内の流れが逆流するのを防ぐ、縁の下の力持ち「チェックバルブ」について知りたい場合は、こちらの記事もおすすめです。
[参考文献リスト]






