海外プラント案件のDesign BasisやPiping Specificationを見ていると、**「Design Code:ASME B31.3」**という記載を目にすることがあります。
ASME B31.3がプロセス配管に関する規格であることは知っていても、
- ASME B31.3では具体的に何を確認するのか
- ASME B31.1とは何が違うのか
- 配管肉厚や許容応力とどう関係するのか
- SUS・EXP・OCCとは何なのか
- 配管応力解析では何を評価しているのか
まで体系的に説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。
結論からいうと、ASME B31.3は配管応力解析だけを規定したCodeではありません。
ASME公式では、B31.3をProcess Pipingの安全な設計・建設に必要な要求事項を定めるCodeとして位置付けており、材料やComponentの選定・適用から、設計、製作、組立、施工、検査、試験まで幅広く扱っています。
この記事では、現行のASME B31.3-2024を念頭に、
STEP1:適用範囲
STEP2:設計条件
STEP3:材料・肉厚
STEP4:荷重・応力
STEP5:製作・検査
という5STEPで、ASME B31.3と配管設計の実務をつなげて解説します。
最初からCode全文を暗記する必要はありません。
まずは、**「自分が今行っている配管設計業務が、B31.3のどこにつながっているのか」**という設計の地図を手に入れましょう。
この記事の前提
本記事はASME公式情報を参照しながら、ASME B31.3を初めて体系的に学ぶ配管設計者向けに全体像を整理した入門記事です。
実際の設計では、プロジェクトで指定されたEdition、法令、Client Specification、Design BasisおよびASME B31.3原文を必ず確認してください。
ASME B31.3とは?まず知っておきたい規格の全体像

ASME B31.3を一言で表すなら、プロセス配管を安全に設計・製作・検査するためのCodeです。
「B31.3って配管応力解析の規格ですよね?」
ASME B31.3を初めて扱う設計者から、このようなイメージを持たれることがあります。
配管応力解析はASME B31.3の重要な一部ですが、B31.3が扱う範囲はそれだけではありません。
ASME公式のB31.3教育プログラムでも、Scope、Design、Materialsだけでなく、Fabrication、Assembly、Erection、Inspection、Examination、Testingまでを一連の要求事項として扱っています。
ASME B31.3はProcess PipingのCode
ASMEはAmerican Society of Mechanical Engineersの略です。
ASME B31シリーズはPressure Piping、つまり圧力配管に関するCode群であり、その中でASME B31.3はProcess Pipingを対象とするCodeです。
Process Pipingには、代表的に化学・石油・製薬・半導体・水素などのプロセス設備で使用される配管があります。
したがって、ASME B31.3=化学プラントだけのCodeと覚えるのも正確ではありません。
重要なのは、B31.3がProcess Pipingという用途・システムを対象にしたCodeだと理解することです。
B31.3は「計算だけ」のCodeではない
配管設計者がB31.3と聞くと、
- Pipe Thickness
- Allowable Stress
- Sustained Stress
- Expansion Stress
- Occasional Stress
などの計算を最初に思い浮かべるかもしれません。
しかしASME公式のB31.3コースでは、設計だけでなく、材料選定、溶接、熱処理、曲げ加工、組立、施工、Inspection、Examination、Testingなども体系的に扱われています。
つまり、配管のStress Ratioが許容値以内だったとしても、「StressがOKだからB31.3としてすべてOK」とは限りません。
材料、Pressure Design、製作、溶接、検査、試験なども含めて成立して、初めて配管システム全体としてCode要求を満たす方向へ進みます。
ASME B31.3は安全に関わるコンセンサスCode
ASME B31.3は単なる民間企業の設計マニュアルではありません。
米国労働安全衛生局OSHAは、ASME B31.3 Process Piping Codeをpublished consensus documentの具体例として挙げています。
OSHAは、このようなコンセンサス文書を業界で広く使われるRAGAGEP、つまりRecognized and Generally Accepted Good Engineering Practicesの情報源として扱っています。
そのため、B31.3の記事では「分かりやすさ」を優先する一方で、数値やCode Requirementを過度に単純化しないことが重要です。
ASME B31.3とB31.1の違い|まず「どちらが厳しい?」と考えない
ASME B31.3を学び始めると、かなりの確率で登場するのがASME B31.1との違いです。
結論からいうと、初心者が最初に覚えるべき違いは、
B31.3=Process Piping
B31.1=Power Piping
という適用分野です。
ASME B31.1はPower Pipingを扱い、ASME公式も発電設備などのPower Piping systemsを対象にしたCodeとして説明しています。
比較表: ASME B31.3とASME B31.1の基本的な違い
| 比較項目 | ASME B31.3 | ASME B31.1 |
|---|---|---|
| Code名称 | Process Piping | Power Piping |
| 主な対象 | プロセス配管 | 電力配管 |
| 代表的な用途 | 化学・石油・製薬・半導体など | 発電・Power Plant関連など |
| 現行Edition | B31.3-2024 | B31.1-2024 |
| 最初に確認すること | Projectでの適用範囲 | Projectでの適用範囲 |
「B31.1とB31.3はどちらが厳しい?」だけでは判断できない
B31.1とB31.3を比較した記事では、安全係数や許容応力などの数字がよく紹介されています。
数字の違いを理解すること自体は重要です。
しかし、配管設計者が最初に考えるべき問いは、「B31.1とB31.3のどちらが厳しいか?」ではありません。
まず確認するべきなのは、「今回の配管システムには、どのCodeが適用されているか?」です。
実務では、
- Design Basis(設計の基本方針)
- Applicable Codes & Standards(適用規格・基準)
- Piping Specification(配管仕様)
- Client Specification(顧客仕様)
- Contract Requirement(契約要件)
- 適用法令
などを確認します。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: B31.1とB31.3を安全係数だけで覚えず、最初にScope(範囲)とProject Specification(プロジェクト仕様書)を確認してください。
B31シリーズは「数字が厳しいCodeを好きに選ぶ」という考え方ではありません。配管システムの用途やProject Requirementを確認し、その配管に適用されるCodeを特定するところから設計が始まります。
※公開時に実在する執筆者の具体的な実務経験がある場合は、ProjectでCode選定に迷った実例へ置換してください。
配管設計者はASME B31.3をこの5STEPで理解する

ASME B31.3の条文を最初から順番に読み始めると、初心者は途中で全体像を見失いやすくなります。
そこで配管設計者の実務に合わせて、B31.3を次の5STEPに整理してみましょう。
STEP1:適用範囲を確認する
STEP2:設計条件を整理する
STEP3:材料・肉厚・Componentを確認する
STEP4:荷重・応力・変位を確認する
STEP5:製作・検査・試験を確認する
ASME公式のB31.3教育プログラムでも、ScopeからDesign Conditions、Pressure Design、Flexibility and Support、Materials、Fabrication、Inspection・Examination・Testingへ進む構成になっています。
つまり、5STEPはB31.3の考え方を配管設計者の業務フローへ置き換えたものです。
STEP1|まず適用範囲を確認する
配管設計で最初に確認するのは、計算式ではありません。
「この配管システムにASME B31.3が適用されるのか」というScopeです。
ASME公式のB31.3コースでも、最初のテーマとしてOverview and Scopeが配置されています。
実務では、まずDesign BasisやPiping Specificationなどから、
- Applicable Code
- 適用Edition
- Fluid Service
- Client Requirement
- Jurisdiction
- Project独自仕様
を確認します。
特にEditionは重要です。
ASME Codeは改訂されるため、Web上で見つけたB31.3の説明が、現在担当しているProjectと同じEditionを前提にしているとは限りません。
2026年現在、ASME B31.3の現行EditionはB31.3-2024ですが、実際のProjectでは契約条件によって別Editionが指定されることもあります。
したがって、「最新版=必ず今回使う版」とも限りません。
STEP2|Design Pressure・Design Temperature・荷重条件を整理する

適用Codeを確認したら、次は配管設計の入力条件を整理します。
代表的なのが、
- Design Pressure(設計圧力)
- Design Temperature(設計温度)
- Weight(荷重)
- Thermal Effect(熱影響)
- Wind(風)
- Earthquake(地震)
- その他のEnvironmental Loads(環境荷重)
です。
ASME公式のB31.3教育内容でも、Design ConditionsとDesign Criteriaの後にPressure Designへ進む構成になっています。
設計条件を整理すると、後の評価項目との関係が見えてきます。
Pressure
→ Pipe ThicknessやPressure Designに関係
Temperature
→ Allowable StressやThermal Expansionに関係
Weight
→ Sustained Load評価に関係
Wind・Earthquake
→ Occasional Load評価に関係
つまり、配管応力解析のSUS・EXP・OCCは突然現れるものではありません。
最初に設定した設計条件が、後のCode評価へつながっています。
STEP3|材料・肉厚・Componentを確認する
ASME B31.3の設計では、配管材料や肉厚、FittingやFlangeなどのComponentも重要です。
代表的な確認事項には、
- Piping Material
- Allowable Stress
- Corrosion Allowance
- Required Thickness
- Fitting
- Flange
- Valve
- Branch Connection
などがあります。
ASME公式B31.3コースでも、Pressure Design of Piping ComponentsやMaterialsは主要テーマとして扱われています。
初心者が特に注意したいのは、
「Stress AnalysisがOK=配管設計全体がOK」ではない
という点です。
配管応力解析のStress Ratioが100%未満でも、必要肉厚を満たしていなかったり、材料やComponentの選定がCode Requirementに適合していなかったりすれば、配管システム全体としては成立しません。
ASME B31.3を理解するときは、
Pressure DesignとSystem Stress Analysisを別々に理解したうえで、最後に一つの配管設計としてつなげる
ことが重要です。
STEP4|重量・熱膨張・地震などの荷重と応力を確認する

ASME B31.3と配管応力解析を理解するうえで、STEP4が最もつまずきやすいポイントです。
最初に考えたいのは、「配管に何が作用しているのか?」です。
配管に作用するものを初心者向けに大きく分けると、Force(荷重)系とDisplacement(変位)系として考えると理解しやすくなります。
Force系の代表例は、
- Weight
- Pressure
- Wind
- Earthquake
です。
一方、Displacement系の代表例は、
- Thermal Expansion
- Anchor Movement
- Equipment Movement
- Settlement
などです。
Sustainedとは
Sustainedは文字どおり、継続的に作用する荷重に関係する評価です。
初心者向けには、Weight+Pressureなどをイメージすると理解しやすいでしょう。
配管応力解析ソフトでは、Sustainedを略してSUSと表示するケースがあります。
配管や内容物の重量は重力として常に作用するため、適切なSupport SpanやRest Supportなどによって支える必要があります。
Expansion / Displacement Stress Rangeとは
温度変化がある配管では、配管が熱膨張・熱収縮します。
配管が自由に伸び縮みできれば大きな拘束力は生じませんが、Anchorや機器ノズルなどで変位を拘束すると、配管に曲げや反力が発生します。
配管応力解析では、このような変位に起因する応力範囲を評価します。
解析ソフトではEXPと表示されるケースがあります。
重要なのは、「温度そのものが配管を押す」と覚えないことです。
温度変化によって配管が伸びようとし、その変位が拘束されることで応力やReactionが発生します。
Occasionalとは
Occasional Loadは、常時作用するわけではない荷重に関係します。
代表的には、
- Earthquake
- Wind
などです。
解析ソフトではOCCと表示されるケースがあります。
SUS・EXP・OCCという3文字を暗記するより、「どんな荷重が配管に作用しているか」から考えた方が、後から応力計算を理解しやすくなります。
Primary StressとSecondary StressはSUS・EXPと完全な同義語ではない
ASME B31.3を学ぶと、Primary StressとSecondary Stressという言葉も登場します。
初心者向けの記事では、
- Primary Stress=SUS
- Secondary Stress=EXP
と説明されることがあります。
概念をイメージする入口としては分かりやすいのですが、完全な同義語として覚えるのは避けた方が安全です。
Primary StressとSecondary Stressは、応力がどのような性質を持つかを理解するための概念です。
一方、
- Sustained
- Occasional
- Displacement Stress Range
は、ASME B31.3のCode評価や配管応力解析結果を見る際に使われる評価区分として整理すると理解しやすくなります。
Primary Stressは、荷重に対して力の釣り合いを保つために必要となる応力として理解できます。
Secondary Stressは、熱膨張などの変位が拘束されることによって発生し、局部的な降伏などによって再分配され得る自己制限性を持つ応力として理解するのが基本です。
この違いが、SustainedとExpansionで許容評価の考え方が異なる理由を理解する入口になります。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: SUS・EXP・OCCの数字だけを見る前に、「何の荷重によって発生した応力なのか」を確認してください。
配管応力解析ソフトはStress Ratioを自動計算してくれますが、Stress Ratioだけでは配管がなぜNGになっているのか分かりません。
Weightなのか、Thermal Expansionなのか、Earthquakeなのかを荷重側から逆算すると、Support追加やLayout変更などの対策を考えやすくなります。
※公開時には、実在する執筆者の解析経験に基づく具体例があれば置換してください。
Stress AnalysisはStressだけ見ない

「配管応力解析」という名前から、Stressだけ確認すればよいと思われがちです。
しかし実務では、少なくとも次の4つを関連付けて見ることが重要です。
- Stress
- Displacement
- Support Reaction
- Equipment Nozzle Load
Stressが許容値以内でも、配管変位が大きすぎれば周囲の設備と干渉する可能性があります。
Support Reactionが大きすぎれば、Support Structure側の設計に影響します。
Equipment Nozzle Loadが大きすぎれば、Pump、Vessel、Heat Exchangerなど接続機器へ過大な荷重を与える可能性があります。
したがって、
「StressがOKだから解析終了」
ではなく、
「Stress+Displacement+Reaction+Nozzle Loadをまとめて確認する」
ことが重要です。
STEP5|製作・検査・試験までがASME B31.3
配管設計者がB31.3を理解するとき、STEP4のStress Analysisで終わらせないことが重要です。
ASME B31.3は、
- Fabrication
- Assembly
- Erection
- Inspection
- Examination
- Testing
まで扱っています。
ASME公式には、B31.3のMaterials・Fabrication・Examination・Testingに特化した教育プログラムも用意されています。
ASMEは、その教育内容でDesign・MaterialsとFabrication・Examination rulesの関係を理解することを重視しています。
つまりASME B31.3は、
計算して終わるCode
ではありません。
設計した配管が適切な材料で製作され、必要な溶接・熱処理・検査・試験を経て、安全な配管システムとして完成するところまでが重要です。
ASME B31.3と配管応力解析はどうつながる?
ASME B31.3と配管応力解析の関係を理解するには、熱膨張を「何mm伸びるか」だけで終わらせないことがポイントです。
熱膨張は「何mm伸びるか」で終わらない
直管の単純な熱伸びは、基本的には次の関係で考えられます。
ΔL = αLΔT
- ΔL:熱伸び量
- α:線膨張係数
- L:配管長
- ΔT:温度差
たとえば高温配管では、温度が上昇すると配管は伸びようとします。
しかし実際の配管設計では、
「何mm伸びるか?」
を計算した時点では終わりません。
次に考えるのは、
「その熱伸びをどこへ逃がすか?」
です。
配管の熱変位を適切に吸収するために、
- Elbow
- Offset
- Expansion Loop
- Anchor
- Guide
- Rest
- Line Stop
- Spring Support
などを組み合わせます。
そして最終的に、
- Stress
- Displacement
- Reaction
- Nozzle Load
を確認します。
LayoutとSupportがFlexibilityを左右する

熱膨張対策で重要なのが**Flexibility(可とう性)**です。
配管レイアウトに曲がりがなく、両端を強く拘束した直管は、熱膨張を逃がしにくくなります。
一方で、ElbowやOffsetを適切に配置すると、配管が曲げ変形することで熱変位を吸収しやすくなります。
つまり、
Temperature
↓
Thermal Expansion
↓
Layout・Support
↓
Flexibility
↓
Stress・Displacement・Reaction
という関係があります。
配管応力解析は、単に「Stressを計算するソフト」ではありません。
配管LayoutとSupport条件を変えながら、安全に熱膨張を吸収できる配管系を設計するための確認手段
と考えると、本質が見えやすくなります。
ASME B31Jは応力解析を深く学ぶ段階で知っておきたい
ASME B31.3による配管応力解析を深く学ぶと、ASME B31Jという規格も目にするようになります。
ASME B31J-2023は、Metallic Piping ComponentsのStress Intensification Factorであるi-Factorや、Flexibility Factorであるk-Factorなどを扱うStandardです。
SIFやFlexibility Factorは、ElbowやBranch Connectionなどの局部的な応力・柔軟性を評価するうえで重要ですが、ASME B31.3を初めて学ぶ段階ですべて理解する必要はありません。
初心者はまず、「配管応力解析を深く学ぶとB31Jにもつながる」という位置付けだけ押さえておけば十分です。
初心者がASME B31.3を勉強するときのおすすめ順序
ASME B31.3は情報量が多いため、最初からCodeを1ページ目から順番に暗記しようとすると挫折しやすくなります。
配管設計者であれば、次の順番がおすすめです。
step
1Scope(範囲)
最初に、「ASME B31.3は何を対象にしているのか」を理解します。
B31.1や他のB31 Codeとの違いも、まずScopeから考えます。
step
2Design Pressure(設計圧力)・Design Temperature(設計温度)
次に配管設計の入力条件を理解します。
Pressure・Temperatureは、後のPressure Design、材料許容応力、熱膨張評価につながります。
step
3Materials(材質)・Allowable Stress(許容応力)
使用材料と温度条件の関係を理解します。
材料の許容応力を単なる暗記数字として扱わず、「材料+温度によって評価条件が変わる」という関係を理解することが大切です。
step
4Pressure Design(圧力設計)
Pipe ThicknessやComponentのPressure Designへ進みます。
step
5Sustained(自重、内圧)・Expansion(熱膨張、強制変位)・Occasional(地震、風)
配管系全体に作用する荷重の種類を整理し、Code Stress評価を理解します。
step
6Flexibility(配管の可とう性)・Support(支持)
熱膨張をどこへ逃がすのかを考えます。
Anchor、Guide、Rest、Line StopなどSupportの役割も、この段階で学ぶと理解しやすくなります。
step
7Fabrication・Examination・Testing
最後に、設計した配管がどのように製作・検査・試験されるのかまで視野を広げます。
ASME公式の教育内容もScopeからDesign、Materials、Fabrication、Inspection・Examination・Testingへ進んでおり、設計と製作・品質確認を一つの体系として理解する構成になっています。
step
8必要になったらB31Jや高度なStress Analysisへ
基礎が理解できてから、
- SIF
- Flexibility Factor
- Fatigue
- Stress Range
- 詳細なLoad Combination
- CAESAR IIなどの解析
へ進みます。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: ASME B31.3は「全部覚えてから使う」のではなく、設計業務と照らし合わせながら必要な箇所を調べる方が理解しやすくなります。
配管設計の実務では、材料を検討しているとき、肉厚を計算するとき、熱膨張を検討するときなど、その都度B31.3の見る場所が変わります。
「いま自分は5STEPのどこにいるのか」を意識すると、Codeの構造を理解しやすくなります。
ASME B31.3を扱うときに初心者が注意したい5つのこと
ASME B31.3を実務で使う場合、Codeの内容だけでなく情報の扱い方も重要です。
1.適用Editionを必ず確認する
ASME B31.3にはEditionがあります。
現在の最新版だけを見るのではなく、担当ProjectでどのEditionが指定されているかを確認してください。
OSHAもRAGAGEPの適用確認では、採用された文書のEditionやPublication Dateを把握する重要性に触れています。
2.Web記事の数字だけで設計しない
Web記事には、
- 許容応力
- 安全係数
- Test Pressure
- Support Span
- Expansion Loop間隔
など、具体的な数字が多数掲載されています。
数字は理解の助けになりますが、Edition、材料、温度、Fluid Service、Project条件などによって前提が違う可能性があります。
設計に使用する値は、最終的に適用EditionのCode本文やProject Specificationで確認することが重要です。
3.Code Requirementと経験則を区別する
配管設計には、Codeが明確に要求している事項と、長年の設計経験から使われているPracticeや目安があります。
たとえばSupport SpanやExpansion Loopの配置間隔などは、設計会社やProjectによってDesign Practiceを持っているケースがあります。
経験則が有用であっても、「B31.3にそう書いてある」とは限りません。
Code RequirementとEngineering Practiceを分けて説明することが重要です。
4.Project Specificationも確認する
実際のプラント設計では、ASME B31.3だけで設計条件が完結するとは限りません。
Client SpecificationやCompany Standardによって、B31.3より追加的な要求が定められているケースがあります。
したがって実務では、Code+Project Specificationという視点が必要です。
5.日本国内では国内法令・基準との関係も確認する
ASME B31.3は国際的に広く利用されるCodeですが、日本国内で設備を設計する場合、対象設備によって国内法令や適用基準も確認する必要があります。
したがって、「ASME B31.3に適合しているから、日本国内の法的要求も自動的にすべて満たす」とは考えない方が安全です。
Projectごとに適用法令、規格、Client Requirementを確認してください。
ASME B31.3に関するよくある質問
Q1.ASME B31.3とは簡単に言うと何ですか?
ASME B31.3はProcess Pipingの安全な設計・製作・検査・試験などに関する要求事項をまとめたCodeです。
配管応力解析だけではなく、Materials、Design、Fabrication、Assembly、Erection、Inspection、Examination、Testingまで幅広く扱います。
Q2.ASME B31.1とB31.3の違いは何ですか?
基本的には、
ASME B31.1=Power Piping
ASME B31.3=Process Piping
という適用範囲の違いから理解します。
「どちらの安全率が高いか」だけでCodeを選ぶのではなく、Project Specificationと適用Scopeを確認することが重要です。ASME B31.1はPower Piping systemsを対象としています。
Q3.ASME B31.3は日本でも使われますか?
海外向けプラントやASMEをDesign Codeとして指定するProjectなどでは、ASME B31.3が使用されます。
ただし、日本国内では対象設備に応じて国内法令や基準の確認も必要です。
ASME B31.3と国内法令・Project Requirementを別々に確認するという考え方が重要です。
Q4.ASME B31.3を全部覚える必要がありますか?
ASME B31.3を最初からすべて暗記する必要はありません。
初心者は、
Scope
→ Design Conditions
→ Materials・Pressure Design
→ Loads・Stress・Flexibility
→ Fabrication・Inspection・Testing
という全体像から理解すると、必要なCode Requirementを探しやすくなります。
Q5.SUS・EXP・OCCとは何ですか?
配管応力解析では一般に、
SUS:Sustained
EXP:Expansion
OCC:Occasional
という略称を目にします。
SUSは重量や圧力などの継続荷重、EXPは熱変位などによるDisplacement Stress Range、OCCは地震や風などのOccasional Loadを理解する入口になります。
ただし、解析ソフトのLoad Case定義はProjectや解析設定によって異なるため、表示名だけで判断せず、実際のLoad Combinationを確認してください。
Q6.Primary StressとSecondary Stressの違いは何ですか?
Primary Stressは、外力に対して力の釣り合いを維持するために必要となる応力として理解できます。
Secondary Stressは、熱膨張の拘束など変位条件によって生じ、局部的な降伏による再分配が可能な自己制限性を持つ応力として理解するのが基本です。
初心者は、Primary=SUS、Secondary=EXPと完全な同義語として暗記せず、
「応力の性質」と「Code上の評価区分」は関連するが別の整理軸
として理解すると混乱しにくくなります。
Q7.配管応力解析にはCAESAR IIが必須ですか?
CAESAR IIは配管応力解析で広く知られているソフトウェアの一つですが、ASME B31.3が特定の市販解析ソフトだけを必須としているわけではありません。
配管系の複雑さ、Project Specification、解析目的、Client Requirementなどに応じて適切な解析方法を選定します。
重要なのはソフト名ではなく、適用Codeに従って必要な荷重・応力・変位・Reaction等を適切に評価できていることです。
まとめ|B31.3は「設計の地図」を理解すると読みやすくなる
ASME B31.3を初めて見ると、Codeのボリュームや専門用語の多さから難しく感じるかもしれません。
しかし、配管設計者が最初からすべてを暗記する必要はありません。
ASME B31.3を配管設計者の視点で整理すると、次の5STEPになります。
STEP1:適用範囲を確認する
STEP2:Design Pressure・Temperatureなどの設計条件を整理する
STEP3:材料・肉厚・Componentを確認する
STEP4:SUS・EXP・OCCなど荷重・応力・変位を確認する
STEP5:Fabrication・Examination・Inspection・Testingまで確認する
そして配管応力解析では、Stress Ratioだけを見るのではなく、
Stress+Displacement+Reaction+Nozzle Load
を関連付けて確認することが重要です。
ASME B31.3を理解する第一歩は、Codeの式を大量に暗記することではありません。
「自分が今、配管設計のどのSTEPにいて、何を確認しようとしているのか」
を把握することです。
設計の地図が頭に入ると、ASME B31.3原文を読むときにも、必要な情報を探しやすくなります。
次は、**「配管応力解析とは?一次応力・二次応力を初心者向けに解説」**で、STEP4の荷重・応力評価をもう一段深く理解してみてください。
この記事を書いた人
- 氏名:KAIJI
- プラント配管設計経験:25年以上
- 配管応力解析経験:10年以上
- ASME B31.3を扱った業務経験:5年以上。
- その他にもASME 31.1や高圧ガス保安法(KHK)を扱った業務経験あり
編集方針
本記事は、ASME B31.3を初めて体系的に学ぶ配管設計者が「自分の業務とCodeのどこがつながっているのか」を理解できることを目的として編集しています。
数値・式・Code Requirementを実際の設計へ適用する場合は、対象Projectで指定されたASME B31.3のEditionおよびProject Specificationを必ず確認してください。
参考文献・公式資料
- ASME B31.3 Process Piping — ASME
- ASME B31.3 Process Piping Code Overview — ASME
- ASME B31.3 Process Piping Code — ASME Learning & Development
- ASME B31.3 Process Piping Materials, Fabrication, Examination and Testing — ASME
- ASME B31.1 Power Piping — ASME
- ASME B31J-2023: Stress Intensification Factors and Flexibility Factors — ASME
- RAGAGEP in Process Safety Management Enforcement — Occupational Safety and Health Administration
ASME公式資料ではB31.3がDesign・MaterialsだけでなくFabrication・Assembly・Erection・Inspection・Examination・Testingまで扱うCodeとして説明されています。
また、OSHAはASME B31.3をpublished consensus documentの例として明示しており、プロセス設備の安全性に関わる技術情報では一次規格を確認する重要性が高いといえます。