配管設計の仕事を始めたばかりの頃は、P&IDやエルボ、スケジュール番号など、知らない専門用語が次々と出てきます。
「配管設計の専門用語は何から覚えればよいのだろう?」
「図面に書かれている言葉の意味がわからず、先輩の説明についていけない……」
配管設計の基礎を身に付けるには、まず図面・配管部品・寸法・設計条件・支持に関する基本用語を理解することが大切です。
この記事では、プラント配管設計の初心者が最初に覚えておきたい20用語を厳選し、それぞれの意味や役割、実際の設計業務での使い方を解説します。
さらに、記事の後半では、タンクからポンプへ水を送る架空の配管ラインを例に、20用語の関係を整理します。
専門用語を個別に覚えるだけでなく、実際の配管図面を理解するための基礎知識を身に付けていきましょう。
この記事でわかること
- 配管設計初心者が最初に覚えたい20用語と意味
- P&ID・アイソメ図など、基本的な配管図面の違い
- 配管部品の名称・形状・役割
- 呼び径・スケジュール番号・設計圧力などの基本
- 配管サポート・熱膨張・配管応力解析の関係
- 覚えた専門用語を実際の配管設計に結び付ける方法
※本記事はプラント配管設計の入門教材です。20用語は初心者向けに編集上選定したものであり、規格が指定する必修用語ではありません。
実設備の設計では、プロジェクトの仕様書・適用規格・設計条件を確認してください。
配管設計の初心者は、まず20用語を5分野に分けて覚えよう

配管設計の専門用語は、図面・配管部品・寸法・設計条件・支持の5分野に整理すると、全体像を理解しやすくなります。
配管設計では、流体を運ぶためのパイプを配置するだけでなく、配管の寸法や材料、使用条件、支持方法などを検討します。
例えば、タンクからポンプへ水を送る配管を設計する場合、次のような情報が必要です。
| 分野 | 確認する内容 | 代表的な用語 |
| 図面 | 何を、どこにつなぐのか | P&ID、アイソメ図 |
| 配管部品 | どのような部品を使うのか | パイプ、エルボ、バルブ |
| 寸法 | どの大きさ・肉厚の配管を使うのか | 呼び径、スケジュール番号 |
| 設計条件 | どのような条件で流体を運ぶのか | 流量、設計圧力、設計温度 |
| 支持・変位 | 配管をどう支え、動きをどう考慮するのか | 配管サポート、アンカー、熱膨張 |
配管設計は、図面・部品・寸法・設計条件・支持がつながっている
配管設計の5分野は、それぞれ独立しているわけではありません。
例えば、P&IDで確認した配管ラインには、パイプやバルブなどの部品が含まれます。パイプには呼び径や肉厚があり、流体の圧力・温度などを考慮して仕様を決定します。
さらに、配管の自重を支えるサポートや、温度変化による熱膨張についても検討する必要があります。
配管設計の各分野を関連付けて学ぶことで、専門用語が実際の設計業務でどのように使われるのかを理解しやすくなります。
専門用語は意味と実際の使い方をセットで覚える
配管設計の専門用語は、名称だけでなく、部品の形状や図面上の位置と結び付けて覚えましょう。
例えば、エルボは配管の方向を変える継手です。
「エルボ=方向を変える部品」と覚えたら、エルボの形状を確認し、実際の配管図面でどこに使用されているかを探してみてください。
用語の意味と図面上の使用例を関連付けることで、専門用語を実務で使える知識として整理できます。
初心者へのワンポイントアドバイス
専門用語を一度にすべて暗記する必要はありません。まずは20用語の意味と役割を把握し、実際の図面や配管部品を見ながら繰り返し確認してみましょう。
配管設計初心者が最初に覚える20用語一覧
配管設計の初心者は、まず以下の20用語から学習を始めてみましょう。
図面に関する用語から始め、配管部品・寸法・設計条件・支持の順に整理しています。
| No. | 用語 | ひとことで説明 |
| 1 | P&ID | 配管・機器・計装などの系統を示す図面 |
| 2 | アイソメ図(スプール図) | 配管の立体形状や寸法を表す図面 |
| 3 | ライン番号 | 配管ラインを識別する番号・記号 |
| 4 | パイプ | 流体を輸送する管 |
| 5 | エルボ | 配管の方向を変える継手 |
| 6 | ティー(チーズ) | 配管を分岐・合流させる継手 |
| 7 | レデューサー(同心、偏心) | 異なる管径の配管を接続する継手 |
| 8 | フランジ | 配管や機器を接続するための部品 |
| 9 | ガスケット | 接合面からの漏れを防ぐシール部材 |
| 10 | バルブ | 流体の流れを遮断・調整する機器 |
| 11 | 呼び径 | 配管サイズを識別するための呼称 |
| 12 | スケジュール番号 | 管の肉厚系列を表す番号 |
| 13 | 流量 | 単位時間当たりに流れる流体の量 |
| 14 | 設計圧力 | 配管の設計に用いる圧力条件 |
| 15 | 設計温度 | 配管の設計に用いる温度条件 |
| 16 | 配管仕様 | 使用する材料・部品などに関する仕様 |
| 17 | 配管サポート | 配管を支え、必要に応じて変位を拘束する構造 |
| 18 | アンカー | 配管の移動・回転を拘束する支持条件 |
| 19 | 熱膨張 | 温度変化によって配管の寸法が変化する現象 |
| 20 | 配管応力解析 | 配管の応力・変位・反力などを評価する解析 |
※この20用語は、プラント配管設計の基本を学ぶために編集上選定したものです。実際の業務で必要となる用語や学習順序は、担当する設備や業務内容によって異なります。
20用語を覚える際は、まず名称と意味を理解し、次に各用語がどのような設計業務で使われるのかを確認してください。
図面の基本用語3選|P&ID・アイソメ図・ライン番号
配管設計の図面を理解するために、最初に覚えたいのが「P&ID」「アイソメ図」「ライン番号」の3用語です。
P&IDは配管や機器の接続関係を示し、アイソメ図は配管の立体形状や寸法などを表します。ライン番号は、複数の配管の中から特定の配管ラインを識別するために使用します。
① P&ID(配管計装図)|配管・機器・計装の関係を示す図面
用語01
P&ID(ピー・アンド・アイ・ディー)
英語:Piping and Instrumentation Diagram
配管・機器・バルブ・計装機器などの接続関係や機能を示す図面。
P&IDは、配管設計で使用する基本的な図面の一つです。
例えば、タンクからポンプへ水を送る設備では、タンクとポンプがどのようにつながっているのか、配管の途中にどのようなバルブや計測機器が設置されているのかをP&IDで確認できます。
配管の流れだけでなく、圧力計や温度計などの計装機器、制御に関する情報も記載されます。
ただし、P&IDは系統や機能を示す図面であり、通常は配管の正確な立体配置や製作寸法を示しません。
実務での使用例: 配管レイアウトを検討する前に、P&IDで機器の接続先、ライン番号、バルブ、計装機器などを確認します。
P&IDなどのプロセス図面の表現方法は、ISO 10628-1などの規格で扱われています。実際の図面を読む際は、適用規格に加えてプロジェクト固有の図面凡例も確認してください。
出典:ISO 10628-1:2014 (ISO)Part 1: Specification of diagrams
② アイソメ図|配管の立体形状や寸法を示す図面
用語02
アイソメ図(配管アイソメトリック図)
英語:Piping Isometric Drawing
配管の立体形状、寸法、継手、接続位置などを示す図面。
アイソメ図は、配管を立体的に表現した図面です。
配管の方向転換や分岐、寸法、接続部などを確認するために使用されます。
例えば、ポンプから出た配管が上方向へ立ち上がり、エルボで水平方向へ曲がる場合、アイソメ図では配管の方向や各部分の寸法を確認できます。
アイソメ図は、配管の製作や施工、部品の数量確認などに使用されることもあります。
実務での使用例: P&IDで確認した配管ラインについて、アイソメ図を使ってエルボやフランジの配置、配管寸法、接続位置などを確認します。
なお、アイソメ図は通常、実際の寸法比率どおりに描かれているとは限りません。配管の長さや位置を確認する際は、図面に記載された寸法値を優先してください。
アイソメ投影による配管の簡略表現については、ISO 6412-2などの規格があります。
出典:ISO/TC 10/SC 10 — Process plant documentation (ISO)Process plant documentation
③ ライン番号|配管ラインを識別するための番号
用語03
ライン番号
英語:Line Number / Line Identification
設備内の配管ラインを識別するために付けられる番号や記号。
プラントには、水、蒸気、空気、薬品などを輸送する多数の配管が設置されています。
ライン番号は、それぞれの配管ラインを識別し、図面や設計資料を照合するために使用します。
例えば、学習用に次のようなライン番号を設定したとします。
100-W-001
| 表記 | 学習用の意味 |
| 100 | 配管サイズの識別 |
| W | 水系統の識別 |
| 001 | 配管ラインの連番 |
この表記は説明用の架空の例です。実際のライン番号に含まれる情報や記載順序は、プロジェクトごとに異なります。
実務での使用例: P&IDに記載されたライン番号をラインリストと照合し、流体の種類、設計圧力、設計温度などの情報を確認します。

P&IDとアイソメ図の比較表
| 比較項目 | P&ID | アイソメ図 |
| 主な目的 | 配管・機器・計装の系統関係を示す | 配管の立体形状・寸法・接続関係を示す |
| 配管の正確な位置 | 通常は示さない | 形状や寸法を確認できる |
| 計装・制御の情報 | 主な記載対象 | 必要な範囲で記載される場合がある |
| 主な使用場面 | 系統確認・設計検討 | 配管製作・寸法確認・施工検討 |
配管設計の実務に役立つアドバイス
P&IDとアイソメ図を読む際は、両方の図面に記載された同じ配管ラインを照合してみましょう。
P&IDで配管の系統や接続先を理解し、アイソメ図で配管の形状や寸法を確認すると、それぞれの図面の役割を整理しやすくなります。
配管部品の基本用語7選|パイプ・継手・バルブなど

配管部品の基本用語は、実際の部品の形状と役割をセットで覚えましょう。
プラント配管は、パイプだけで構成されているわけではありません。
配管の方向を変えるエルボ、分岐させるティー、異なる管径をつなぐレデューサーなど、さまざまな部品を組み合わせて構成されています。
④ パイプ|流体を輸送する管
用語04
パイプ(Pipe)
水・蒸気・空気・薬品などの流体を輸送するための管。
パイプは、プラント配管を構成する基本的な部品です。
パイプには炭素鋼鋼管やステンレス鋼管など、さまざまな材料が使用されます。使用する材料は、流体の性質、温度、圧力、腐食の可能性などを考慮して選定します。
また、パイプには外径・内径・肉厚があり、流体の輸送や強度の確保に関係します。
実務での使用例: 配管仕様書とラインリストを確認し、指定された材料・呼び径・肉厚などに適合するパイプを選定します。
鋼管の寸法体系については、ASME B36.10Mなどの規格が参考になります。
⑤ エルボ|配管の方向を変える継手
用語05
エルボ(Elbow)
配管の方向を変えるために使用する曲がり形状の継手。
エルボは、配管を曲げる必要がある場所に使用する部品です。
例えば、水平に設置された配管を上方向へ立ち上げる場合、90°エルボを使用することがあります。
エルボには90°エルボや45°エルボがあり、曲がり半径などによっても種類が分かれます。
実務での使用例: 配管レイアウト図やアイソメ図で配管の方向転換が必要な場所を確認し、配管仕様に適合するエルボを使用します。
エルボの寸法や種類は、適用する継手規格や配管仕様に基づいて確認します。
⑥ ティー|配管を分岐・合流させる継手
用語06
ティー(Tee)
配管をT字形に分岐・合流させるための継手。
ティーは、1本の配管を別の方向へ分岐させたり、複数の流れを合流させたりする場所に使用します。
例えば、1本の冷却水配管から2台の機器へ水を供給する場合、配管を分岐させるためにティーを使用することがあります。
ティーには、主管と枝管のサイズが同じ「同径ティー」と、サイズが異なる「異径ティー」があります。
実務での使用例: P&IDで配管の分岐を確認し、配管レイアウトやアイソメ図で分岐位置と使用するティーの仕様を確認します。
⑦ レデューサー|異なる管径の配管を接続する継手
用語07
レデューサー(Reducer)
異なる呼び径の配管を接続するための継手。
レデューサーは、配管のサイズを変更する場所に使用します。
例えば、呼び径100Aの配管から呼び径80Aの配管へ接続する場合、適切なレデューサーを使用することがあります。
代表的な形状には、中心軸が一致する同心レデューサーと、片側の面がほぼ直線となる偏心レデューサーがあります。
同心レデューサーと偏心レデューサー
同心レデューサーは、入口と出口の中心軸が一致する形状です。
偏心レデューサーは、入口と出口の中心軸がずれた形状です。配管内の気体や液体の滞留などを考慮し、設置方向を検討する場合があります。
ただし、偏心レデューサーの向きは使用条件によって異なるため、常に一方向に設置するものではありません。
実務での使用例: 配管とポンプのノズルなどで接続サイズが異なる場合に、指定されたサイズと形状のレデューサーを確認します。
⑧ フランジ|配管や機器を接続する部品
用語08
フランジ(Flange)
配管同士や配管と機器・バルブなどを接続するために使用する、つば状の部品。
フランジは、配管をボルト・ナットなどによって接続する場所に使用します。
例えば、ポンプと配管をフランジで接続する場合、フランジの接合面に適切なガスケットを挟み、ボルト・ナットで締め付ける構造があります。
フランジ接合は、機器の点検や交換のために接続部を取り外す必要がある場所などで使用されます。
実務での使用例: ポンプノズルと配管を接続する際、フランジのサイズ、圧力クラス、シール面形状、材質などの適合性を確認します。
ASME B16.5は、対象となる配管フランジおよびフランジ付き継手の寸法、材料、圧力・温度定格などを扱う規格です。
出典:ASME B16.5 — Pipe Flanges and Flanged Fittings (ASME)
⑨ ガスケット|接合面からの漏れを防ぐシール部材
用語09
ガスケット(Gasket)
フランジなどの接合面に挟み、流体の漏れを防ぐために使用するシール部材。
ガスケットは、フランジ接合部などの密封性を確保するために使用します。
フランジの接合面には微細な凹凸があるため、適切なガスケットを使用し、所定の締付け条件を満たすことで密封性を確保します。
ガスケットには、シートガスケット、うず巻形ガスケット、リングジョイントガスケットなど、さまざまな種類があります。
実務での使用例: 配管仕様書や接合部の仕様に基づき、流体・圧力・温度・フランジ面形状などに適合するガスケットを確認します。
フランジとガスケットはセットで覚えよう
フランジは配管や機器を接続する部品であり、ガスケットは接合面の漏れを防ぐためのシール部材です。
フランジ接合部では、フランジ・ガスケット・ボルトなどを組み合わせて密封性を確保します。
⑩ バルブ|流体の流れを遮断・調整する機器
用語10
バルブ(Valve)
流体の流れを遮断・調整するなどの目的で使用する機器。
バルブは、配管内を流れる水や蒸気などの流体を制御するために使用します。
例えば、ポンプの点検時に配管内の流れを遮断したい場合、適切な遮断弁を使用します。
バルブには用途に応じてさまざまな種類があります。
| バルブの種類 | 主な用途 |
| 仕切弁(ゲートバルブ) | 流路の開閉 |
| 玉形弁(グローブバルブ) | 流路の開閉・流量調整 |
| ボールバルブ | 流路の開閉など |
| 逆止弁(チェックバルブ) | 逆流の防止 |
実務での使用例: P&IDでバルブの種類や設置位置を確認し、配管仕様書やバルブの仕様書で適用条件を照合します。
バルブの種類によって、流量調整への適性や許容される使用方法は異なります。すべてのバルブを同じ目的で使用できるわけではありません。
配管寸法の基本用語2選|呼び径・スケジュール番号
配管の寸法を理解するために、最初に覚えたいのが「呼び径」と「スケジュール番号」です。
呼び径は配管サイズを識別するための呼称であり、スケジュール番号は管の肉厚系列を表します。
呼び径とスケジュール番号を組み合わせることで、配管寸法を確認するための基本情報を整理できます。
⑪ 呼び径|配管サイズを表す呼称
用語11
呼び径(Nominal Pipe Size / Nominal Diameter)
配管のサイズを識別するために使用する呼称。
呼び径は、配管のサイズを表すための名称です。
日本では「25A」「50A」「100A」などのA呼称や、「1B」「2B」「4B」などのB呼称が使用されています。
また、ASME系の寸法表ではNPS(Nominal Pipe Size)やDN(Nominal Diameter)が使用されます。
呼び径について注意したいのは、呼び径の数値が、そのまま配管の外径や内径を表しているわけではないという点です。
例えば、一般的な鋼管寸法系列では、次のようになります。
| 呼び径 | NPS | 外径 |
| 25A | 1 | 33.4mm |
| 50A | 2 | 60.3mm |
| 100A | 4 | 114.3mm |
※一般的なASME B36.10M系の鋼管外径の例です。管種・適用寸法規格によって確認すべき寸法体系は異なります。
このように、呼び径100Aの鋼管の外径は100mmではありません。
実務での使用例: P&IDやラインリストで配管の呼び径を確認し、適用する寸法規格の寸法表と照合して外径や肉厚を確認します。
出典:ASME B36.10M — Welded and Seamless Wrought Steel Pipe (ASME)
⑫ スケジュール番号|配管の肉厚系列を示す番号

用語12
スケジュール番号(Schedule Number)
鋼管などの肉厚系列を識別するために使用する番号。
スケジュール番号は、配管の肉厚を確認する際に使用します。
例えば、SCH10、SCH40、SCH80などの表記があります。
一般的な鋼管寸法系列では、同じ呼び径・同じ寸法規格であっても、スケジュール番号によって肉厚が異なります。
ここで重要なのは、SCH40は肉厚40mmという意味ではないという点です。
配管の肉厚は、呼び径とスケジュール番号を組み合わせ、適用する寸法表で確認します。
例えば、一般的なASME B36.10M系のNPS 4(100A)の寸法は次のとおりです。
| 呼び径 | スケジュール | 外径 | 公称肉厚 |
| 100A | SCH40 | 114.3mm | 6.02mm |
| 100A | SCH80 | 114.3mm | 8.56mm |
SCH40とSCH80は外径が同じでも、公称肉厚が異なるため、内径も異なります。
実務での使用例: 配管仕様書に指定された呼び径とスケジュール番号を確認し、寸法表で外径・肉厚・内径などを照合します。
配管の必要肉厚は、設計圧力・設計温度・材料・腐れ代・製造公差などの条件を考慮して検討します。スケジュール番号だけで配管の安全性を判断することはできません。
配管寸法を確認するときのアドバイス
呼び径やスケジュール番号を見ただけで、外径・内径・肉厚を決めつけないようにしましょう。
配管の寸法を確認する際は、適用する寸法規格を特定し、呼び径と肉厚系列を寸法表に照合することが大切です。
設計条件の基本用語4選|流量・圧力・温度・配管仕様

配管設計では、配管の形状や寸法だけでなく、どのような流体を、どのような条件で輸送するのかを把握する必要があります。
初心者が最初に覚えたい設計条件に関する用語は、流量・設計圧力・設計温度・配管仕様の4つです。
⑬ 流量|単位時間当たりに流れる流体の量
用語13
流量(Flow Rate)
単位時間当たりに流れる流体の量。
流量は、配管の中を水や蒸気などの流体がどれだけ流れるかを表す値です。
流量には、体積を基準とする体積流量と、質量を基準とする質量流量があります。
| 種類 | 意味 | 単位の例 |
| 体積流量 | 単位時間当たりに流れる流体の体積 | m³/h、L/min |
| 質量流量 | 単位時間当たりに流れる流体の質量 | kg/h、kg/s |
流量は、配管のサイズや流速を検討するための基本情報です。
例えば、同じ体積流量の水を流す場合、流路断面積が小さくなると平均流速は大きくなります。
体積流量と平均流速の関係は、次の式で表せます。
Q = A × v
Q:体積流量(m³/s)、A:流路断面積(m²)、v:断面平均流速(m/s)
実務での使用例: プロセス設計で設定された流量を確認し、流速や圧力損失などを考慮して配管サイズを検討します。
⑭ 設計圧力|配管の設計に用いる圧力条件
用語14
設計圧力(Design Pressure)
配管の強度や部品の適用性などを検討する際に用いる圧力条件。
設計圧力は、配管の設計で考慮する圧力条件です。
例えば、通常運転時の圧力が0.5MPaであっても、起動・停止時の圧力変動や異常時の条件などを考慮する必要がある場合があります。
設計圧力と運転圧力は、同じ値になるとは限りません。
| 用語 | 意味 |
| 運転圧力 | 設備が運転される際の圧力 |
| 設計圧力 | 配管の設計に使用する圧力条件 |
実務での使用例: 設計圧力を確認し、パイプの必要肉厚やフランジ・バルブなどの圧力定格への適合性を検討します。
設計圧力の設定では、設備の運転条件、想定される圧力変動、適用規格、プロジェクトの設計基準などを確認する必要があります。
ASME B31.3は、プロセス配管の設計・材料・構成部品などに関する要求事項を扱う規格です。
出典:ASME B31.3 — Process Piping (ASME)
⑮ 設計温度|配管の設計に用いる温度条件
用語15
設計温度(Design Temperature)
配管の材料・部品の適用性や強度などを検討する際に用いる温度条件。
設計温度は、配管の設計で考慮する温度条件です。
例えば、高温の蒸気を輸送する配管では、温度による材料の許容応力の変化や熱膨張などを考慮する必要があります。
一方、低温の流体を輸送する配管では、材料の低温特性などが重要になる場合があります。
設計温度と通常の運転温度は、同じとは限りません。
また、圧力設計に用いる温度と、熱膨張などの変位検討に用いる温度条件は、評価目的に応じて整理する必要があります。
実務での使用例: ラインリストに記載された設計温度を確認し、配管材料・フランジ・ガスケットなどの適用性を検討します。
⑯ 配管仕様(Piping Class)|使用する材料・部品などの仕様
用語16
配管仕様(Piping Class / Piping Material Specification)
配管に使用する材料・部品・接続方法などを定めた、プロジェクト上の仕様。
配管仕様は、使用するパイプや継手、フランジ、バルブなどを確認するための重要な設計情報です。
例えば、配管仕様書には次のような情報が記載される場合があります。
| 項目 | 記載内容の例 |
| パイプ | 材料、寸法規格、肉厚系列 |
| 継手 | 材料、形状、接続方法 |
| フランジ | 材料、圧力クラス、面形状 |
| バルブ | 材料、形式、適用規格 |
| ガスケット | 材料、種類、適用する接合部 |
実務での使用例: P&IDやラインリストで配管仕様を確認し、配管仕様書に指定された材料や部品を選定します。
なお、プロジェクトで使用する「Piping Classの識別記号」と、フランジの「ASME Class 150」「Class 300」などの圧力クラスは同じ意味ではありません。
配管仕様の識別方法や記載項目は、プロジェクトごとに異なる場合があります。
配管支持・変位の基本用語4選|サポート・熱膨張など
配管設計では、配管を適切に支えることに加えて、温度変化などによって生じる配管の動きを考慮する必要があります。
初心者が最初に覚えたいのは、配管サポート・アンカー・熱膨張・配管応力解析の4用語です。
配管サポートは配管を支えるための構造ですが、支持する方向や拘束する方向によって、配管の動きや発生する反力が変わります。
⑰ 配管サポート|配管を支え、必要な動きを制御する構造
用語17
配管サポート(Pipe Support)
配管の自重などを支持し、必要に応じて配管の移動や回転を拘束・誘導するための支持構造。
配管サポートは、配管が自重や内部流体の重量などによって過大に変形しないように支持するために使用します。
また、配管サポートには、配管の移動方向を制限したり、特定の方向へ動けるようにしたりする役割があります。
代表的な支持・拘束条件には、次のような種類があります。
| 種類 | 主な役割 |
| Rest | 配管の鉛直下向きの荷重を受ける |
| Guide | 配管の横方向の移動を制限する |
| Line Stop | 配管軸方向の移動を制限する |
| Anchor | 配管の移動・回転を拘束する |
実際の拘束方向や自由度は、サポートの構造・設置方向・接触条件などによって異なります。
実務での使用例: 配管レイアウトと荷重条件を確認し、配管の自重を支持しながら、必要な熱膨張を考慮したサポート配置を検討します。
⑱ アンカー|配管の移動・回転を拘束する支持条件
用語18
アンカー(Anchor)
配管の移動や回転を、所定の位置で拘束する支持条件。
アンカーは、配管の位置を保持するために使用される支持・拘束条件です。
例えば、配管応力解析のモデルでアンカーを設定すると、通常はX・Y・Zの3方向の並進変位と、各軸回りの3方向の回転を拘束する理想化モデルとして扱います。
一方、実際の支持構造には剛性や変形があるため、すべてのアンカーを完全剛体とみなしてよいとは限りません。
実務での使用例: 配管の荷重や熱膨張、機器への接続条件などを考慮し、必要な拘束位置や支持構造を検討します。
アンカーの位置は、熱膨張によって発生する応力やサポート反力、機器ノズルに作用する荷重などに関係します。
そのため、アンカーは配管を固定すればよいという考え方だけで配置するものではありません。
⑲ 熱膨張|温度変化によって配管の長さが変わる現象

用語19
熱膨張(Thermal Expansion)
温度が上昇することで物体の寸法が増加する現象。
金属製の配管は、温度が変化すると寸法が変わります。
一般的な金属配管では、温度が上昇すると長さが増加し、温度が低下すると収縮します。
例えば、常温で設置された配管に高温の蒸気を流す場合、配管の温度上昇によって長さが増加します。
一様な温度変化を受ける直管の自由熱伸びは、線膨張係数を一定とみなせる場合、次の式で概算できます。
ΔL=αLΔT
| 記号 | 意味 |
| ΔL | 配管の熱伸び量 |
| α | 材料の線膨張係数 |
| L | 配管の初期長さ |
| ΔT | 温度変化 |
例えば、長さ10mの鋼管について、線膨張係数を12×10⁻⁶/℃、温度上昇を100℃と仮定すると、自由熱伸び量は約12mmです。
ただし、実際の配管では、エルボやサポート、アンカーなどによって動きが制限されます。
温度変化による配管の変位が拘束されると、配管に熱応力やサポート反力などが発生することがあります。
実務での使用例: 高温配管のレイアウトを検討する際、配管の熱膨張を考慮し、配管形状・支持条件・機器との接続条件などを確認します。
⑳ 配管応力解析|応力・変位・反力などを評価する解析
用語20
配管応力解析(Piping Stress Analysis)
配管に作用する荷重や変位を考慮し、応力・変位・サポート反力などを評価する解析。
配管応力解析は、配管に作用する荷重や温度変化などを考慮し、配管の応力や変位、サポート反力などを評価するために行います。
配管に関係する代表的な荷重・変位には、次のようなものがあります。
| 荷重・変位の種類 | 内容 |
| 自重 | 配管・内部流体・保温材などの重量 |
| 圧力 | 配管内部などに作用する圧力 |
| 熱膨張 | 温度変化による配管の変位 |
| 地震 | 地震によって配管に作用する慣性力や支持点変位など |
| 外力 | 風荷重や接続機器からの荷重など |
配管応力解析では、検討対象に応じて、応力・変位・サポート反力・機器ノズル荷重などを確認します。
例えば、高温配管では、熱膨張による変位が配管レイアウトやサポート配置に適切に考慮されているかを検討します。
実務での使用例: 配管のレイアウトや支持条件をモデル化し、適用規格やプロジェクトの設計基準に基づいて応力・変位・反力などを評価します。
配管応力解析で評価する項目や許容値は、適用規格・材料・設計条件・機器の仕様などによって異なります。
出典:ASME B31.3 — Process Piping (ASME)
配管支持を考えるときのアドバイス
配管サポートを検討する際は、自重を支えることと、熱膨張などによる配管の動きを制御することを区別しましょう。
配管を固定する位置や移動を許容する方向によって、配管の応力・変位・反力が変わる場合があります。配管サポートは、配管全体の動きと荷重条件を考慮して検討することが重要です。
実践編|1本の配管ラインで20用語を復習しよう
配管設計の20用語を覚えたら、次は1本の配管ラインを使って、それぞれの用語がどのように関係しているかを確認しましょう。
ここでは、タンクからポンプへ水を送る架空の配管ラインを例に、図面・配管部品・寸法・設計条件・支持の5分野を復習します。
タンクからポンプへ水を送る配管を例に考える

図面・部品・寸法・設計条件・支持の順に確認する

まず、タンクとポンプが配管で接続されていることを確認します。
P&IDでは、設備の接続関係やバルブの位置などを確認します。アイソメ図では、配管がどのような方向に延び、どこで曲がっているのかなどを確認します。
続いて、配管を構成する部品を探してみましょう。
タンクからポンプまでの配管にはパイプ・バルブ・エルボ・フランジなどを使用する場合があります。フランジ接合部では、接合面の密封に適切なガスケットを使用します。
次に、配管の呼び径・スケジュール番号を確認します。呼び径と肉厚系列は、適用する寸法規格と組み合わせて確認する必要があります。
さらに、流量・設計圧力・設計温度・配管仕様を確認し、使用する部品や材料の適合性を検討します。
最後に、配管の自重を支えるサポートや、温度変化によって生じる熱膨張を考慮します。必要に応じて配管応力解析を行い、応力・変位・サポート反力などを評価します。
なお、学習用概念図に描かれていないティー・レデューサー・アンカーなども、実際の配管の構成や設計条件に応じて使用されます。
20用語の復習では、各用語を覚えるだけでなく、どの図面や設計資料を確認するために必要な言葉なのかを考えることが大切です。
5つの確認問題で理解度をチェック
最後に、20用語の基本的な意味を理解できているか確認してみましょう。
配管設計の基本チェック
Q1. P&IDとアイソメ図の主な違いは何ですか?
Q2. 配管の方向変更・分岐・異径接続には、それぞれどの継手を使用しますか?
Q3. 呼び径とスケジュール番号は何を表していますか?
Q4. 設計圧力と設計温度は、配管設計でなぜ必要ですか?
Q5. 配管の熱膨張とサポートは、どのように関係しますか?
5つの確認問題で理解できなかった用語があれば、対応する本文を読み返し、部品や図面のイメージと一緒に確認してみましょう。
配管設計初心者がよく疑問に思うこと【FAQ】
Q1. 配管設計の初心者は、20用語だけ覚えれば十分ですか?
20用語は、配管設計の全体像を理解するための入門的な学習範囲です。
実際の業務では、配管材料・溶接・図面・流体・強度・適用規格など、さらに多くの知識が必要になります。
まずは基本用語を理解し、担当する業務に応じて学習範囲を広げていきましょう。
Q2. P&IDとアイソメ図は、どちらから勉強すればよいですか?
初心者は、まずP&IDで配管・機器・計装の接続関係を理解し、次にアイソメ図で配管の立体形状や寸法を確認する学習方法が考えられます。
ただし、担当する業務によって必要な図面は異なるため、実際の作業に合わせて学習を進めてください。
Q3. 配管設計にはCADの知識が必要ですか?
配管図面の作成や修正を担当する場合、CADの操作知識は役立ちます。
ただし、CADを操作できることと、配管設計の技術的な内容を理解していることは別です。
図面の意味、配管部品、設計条件などの基礎知識も身に付けましょう。
Q4. ASME B31.3などの規格は、最初から全部覚える必要がありますか?
最初から規格の全文を暗記する必要はありません。
まずはASME B31.3がどのような配管を対象とする規格なのか、配管設計のどの項目に関係するのかを理解しましょう。
実務では、プロジェクトで指定された適用規格の版と必要な条項を確認します。
Q5. 20用語を覚えた後は何を勉強すればよいですか?
次はP&ID・アイソメ図の読み方や、配管材料と寸法の関係を学んでみましょう。
さらに、配管サポート、熱膨張、配管応力解析などを学ぶと、用語と設計業務の関係をより深く理解できます。
まとめ|20用語を覚えたら、次は配管図面を読んでみよう

配管設計の初心者は、まず図面・配管部品・寸法・設計条件・支持の5分野に関する20用語から学習を始めてみましょう。
配管設計の基本用語は、次の5分野に分けて整理できます。
| 分野 | 覚えておきたい内容 |
| ①図面 | P&ID・アイソメ図・ライン番号 |
| ②配管部品 | パイプ・エルボ・ティー・レデューサー・フランジ・ガスケット・バルブ |
| ③寸法 | 呼び径・スケジュール番号 |
| ④設計条件 | 流量・設計圧力・設計温度・配管仕様 |
| ⑤支持・変位 | 配管サポート・アンカー・熱膨張・配管応力解析 |
配管設計の専門用語は、名称を暗記するだけでなく、図面や配管部品、設計条件との関係を理解することが大切です。
まずは、実際のP&IDやアイソメ図を開き、今回学んだ用語がどこに登場するのか確認してみてください。
「用語の意味がわかる」から「図面に書かれた情報が理解できる」へ。
基本用語と実際の図面を関連付けながら、配管設計の知識を少しずつ広げていきましょう。
次に学びたい配管設計の基礎知識
20用語を理解したら、次は図面や設計条件について詳しく学んでみましょう。
| 学習テーマ | 学べる内容 |
| P&ID・アイソメ図の読み方 | 配管の接続関係、立体形状、寸法の確認方法 |
| 配管サポートの基本| | Rest・Guide・Line Stop・Anchorの役割と違い |
| 配管の熱膨張 | 熱伸び量の計算方法と配管レイアウトの関係 |
| 配管応力解析の基本 | 一次応力・二次応力、変位、サポート反力の考え方 |
| ASME B31.3の基本 | プロセス配管の設計で使用される規格の目的と適用範囲 |
参考文献・技術資料
本記事の執筆にあたって参照した主な技術資料は、以下のとおりです。
| 資料名・発行元 | 主な参照内容 |
| ASME B31.3 — Process Piping (ASME) | プロセス配管の設計、材料、構成部品などの適用範囲 |
| ASME B36.10M — Welded and Seamless Wrought Steel Pipe (ASME) | 鋼管の寸法、呼び径、肉厚系列 |
| ASME B16.9 — Factory-Made Wrought Buttwelding Fittings (ASME) | エルボ・ティーなどの突合せ溶接式継手 |
| ASME B16.5 — Pipe Flanges and Flanged Fittings (ASME) | フランジの寸法、材料、圧力・温度定格 |
| ISO 10628-1:2014 — Specification of diagrams (ISO) | 化学・石油化学分野のフロー図の分類と表現方法 |
| ISA-5 Series of Standards (ISA) | 計装・制御に関する記号や識別方法 |
本記事では、規格発行元の公開情報を参考に基本概念を説明しています。
規格本文の全文を転載したものではなく、個別の設備に対する設計の適合性を保証するものでもありません。
実際の設計では、プロジェクトに指定された適用規格・版・仕様書を確認してください。