配管応力解析

配管応力解析とは?一次応力・二次応力を初心者向けに解説

配管応力解析を勉強し始めると、「一次応力」「二次応力」「SUS」「EXP」「OCC」など、似たような専門用語が一気に出てきます。

  • 「一次応力と二次応力は何が違うの?」
  • 「SUSと一次応力は同じ意味?」
  • 「熱応力は高くても大丈夫なの?」
  • 「解析結果では、結局どの数字を見ればいいの?」

このような疑問を持つのは珍しくありません。

最初から規格式を丸暗記する必要もありません。

配管応力解析を理解する最初のポイントは、「一次応力は力に支配される」「二次応力は拘束された変位によって生じる」という違いを理解することです。

ASMEの技術資料でも、

  • Primary Stressは、force-controlled load(力で支配される荷重)に対する応力
  • Secondary Stressは、deformation-controlled load(変形で支配される荷重)に対する応力

であり、Secondary Stressにはself-limiting(自己制限的)な性質があると説明されています。

熱応力もSecondary Stressの代表例として示されています。

この基本が分かると、

  • 自重・内圧 → Sustained(SUS)
  • 熱膨張・強制変位 → Expansion(EXP)
  • 地震・風など → Occasional(OCC)

という配管応力解析の実務的な分類も理解しやすくなります。

ただし、「一次応力=SUS」「二次応力=EXP」が完全な同義語というわけではありません。

本記事では、この違いも含めて、配管応力解析の全体像を初心者向けに順番に解説します。

この記事を読み終える頃には、配管応力解析結果を見ながら、

  • 何の荷重を評価しているのか
  • SUS・EXP・OCCとは何か
  • なぜSUSとEXPでは許容値が違うのか
  • Stress Ratioは何を意味するのか
  • 応力以外に何を確認する必要があるのか

を自分の言葉で説明できることを目指します。

この記事で分かること

  • 配管応力解析とは何をする解析なのか
  • 一次応力と二次応力の本質的な違い
  • Force-controlledとDisplacement-controlledの意味
  • 二次応力の「自己制限性」とは何か
  • SUS・EXP・OCC・OPEの違い
  • なぜSUSとEXPで許容値が異なるのか
  • Stress Ratioだけでは配管設計が終わらない理由
  • サポート設計と熱応力の関係

配管応力解析とは?まず「何を確認する解析なのか」を理解しよう

配管応力解析とは、配管に作用するさまざまな荷重によって発生する変位・荷重・モーメント・応力などを計算し、配管や接続機器が安全に使用できるか確認する解析です。

「応力解析」という名前から、配管に発生する応力だけを計算するものだと思われがちですが、実務ではもっと広い範囲を確認します。

伊藤忠テクノソリューションズの技術解説でも、プラント配管には自重、熱膨張、地震、風、振動などが作用し、過大な変形・応力や流体漏えいを防止するために、配管ルートやサポートの種類・位置を決定すると説明されています。

配管には自重・内圧・熱膨張・地震などの荷重が作用する

配管に作用する荷重には、代表的に次のものがあります。

荷重 内容
配管自重 配管そのものの重量
流体重量 配管内部を流れる液体などの重量
保温材重量 保温材・外装材などの重量
内圧 配管内部の圧力
熱膨張 温度変化による配管の伸び・縮み
強制変位 機器ノズルや支持点などから与えられる変位
地震 地震加速度による慣性力
風 屋外配管等に作用する風荷重
動的荷重 ウォーターハンマー、安全弁反力、振動など

AutoPIPEについても、静的解析では内圧・熱膨張・強制変位・摩擦力などを扱い、動的解析にも対応する配管応力解析システムとして紹介されています。

重要なのは、荷重によって配管への作用の仕方が違うことです。

自重は配管が変形しても消えません。

一方、熱膨張による応力は、配管が自由に伸びられるか、Anchorや機器ノズルなどで拘束されているかによって大きく変わります。

この荷重の「性質の違い」が、一次応力と二次応力を理解する鍵になります。

配管応力解析で確認するのは「応力」だけではない

配管応力解析では、少なくとも次のような結果を確認します。

  • 配管応力
  • 配管変位
  • サポート反力
  • Anchor荷重
  • Guide・Line Stopなどの拘束荷重
  • ポンプ・タンク・熱交換器などへのノズル荷重
  • 配管の接触・浮き上がり
  • 必要に応じて動的応答

JFEプラントエンジのAutoPIPEによる解析事例でも、熱・内圧・自重・地震による配管応力だけでなく、配管変位、サポートや支持構造物に作用する反力、接続機器への荷重まで評価すると説明されています。

そのため、「Stress Ratioが100%以下だったから配管設計は終了」という考え方では不十分です。

配管自体の応力が許容値以下でも、ポンプノズルに過大な荷重を伝えていたり、配管が大きく移動して周囲と干渉したり、サポート反力が過大になったりする可能性があります。

配管応力解析の基本は「荷重→変形→応力→評価→改善」

配管応力解析の流れをシンプルにすると、次のようになります。

配管モデルを作る

↓

自重・内圧・温度・地震などの荷重条件を与える

↓

変位・荷重・モーメント・応力・反力を計算する

↓

ASME B31.3などの適用規格や機器側の許容値と比較する

↓

問題があれば配管ルートやサポートを変更する

↓

再解析して成立性を確認する

配管応力解析とは、単純な「強度計算」ではありません。

配管ルート、サポート、機器との接続条件まで含めて、配管システム全体を成立させるための設計プロセスと考える方が実務に近い理解です。

経験者からの一言アドバイス

【結論】:配管応力解析を始めたばかりなら、最初からStress Ratioだけを追いかけず、「どんな荷重が、どちら向きに配管を動かそうとしているか」を先に確認してください。

配管応力解析は数字だけを眺めても理解しにくいからです。荷重→変位→拘束→応力という物理現象を頭の中で描けるようになると、解析結果の意味が一気に分かりやすくなります。

一次応力と二次応力の違いは「力」と「拘束された変位」

配管応力解析を理解するうえで最も重要なのが、一次応力(Primary Stress)と二次応力(Secondary Stress)の違いです。

最初は次のように覚えてください。

ポイント

一次応力:力を受け続けることで生じる応力

二次応力:動きたいのに拘束されることで生じる応力

ASMEの公開技術資料では、Primary Stressをforce-controlled loadsへの応答、Secondary Stressをimposed deformation-controlled loadsへの応答として整理しています。

Secondary Stressについてはself-limitingであり、Thermal StressもSecondary Stressであると説明されています。

ここから詳しく見ていきます。

一次応力とは「力を受け続けることで生じる応力」

一次応力を理解するには、配管の上に重りを載せた状態をイメージすると分かりやすくなります。

配管に重量が作用すると、配管は重量を支えなければなりません。

配管が少し変形したとしても、重りそのものが消えるわけではありません。

配管には重力が存在する限り荷重が作用し続けます。

このように外から加わる力によって支配される荷重を、Force-controlled Loadと考えます。

ASMEの説明でも、Primary Stressはforce-controlled loadによって発生し、外から加わる荷重との力・モーメントの釣り合いを満足する必要があるとされています。

配管設計では、自重や圧力に関係する応力が代表的なイメージです。

一次応力が過大になった状態では、局部的に少し変形しただけでは荷重そのものが消えません。

そのため、一次応力では過大な荷重による塑性崩壊などを防止する視点が重要になります。

二次応力とは「動きたいのに拘束されて生じる応力」

二次応力の代表例が、熱膨張による応力です。

配管の温度が上昇すると、配管は次の式で表される量だけ伸びようとします。

Δ L =α L Δ T

ここで、

  • Δ L:熱伸び量
  • α:線膨張係数
  • L:配管長さ
  • Δ T:温度変化

です。

重要なのは、配管が熱膨張すること自体が直ちに大きな熱応力を生むわけではないことです。

両端が自由な配管であれば、温度が上昇しても配管はそのまま伸びることができます。

一方、配管の両端がAnchorや機器ノズルなどで固定されている場合、配管は、「伸びたい。でも伸びられない」状態になります。

熱膨張によって生じようとする「変位」が拘束されることで、配管内部に熱応力が発生します。

これがDisplacement-controlled、つまり変位によって支配される応力という考え方です。

ASMEの技術資料も、Secondary Stressをdeformation-controlled loadによって生じる応力として説明しています。

二次応力には「自己制限性」がある

一次応力と二次応力を分けるもう一つの重要な考え方が、**自己制限性(Self-limiting)**です。

Secondary Stressにはself-limitingな性質があるとASMEの技術資料で説明されています。

熱膨張を例に考えてみましょう。

配管が熱で伸びようとしているにもかかわらず両端を完全に拘束すると、弾性解析では大きな熱応力が計算されることがあります。

しかし局部的な塑性変形などによって配管がわずかに変形できれば、拘束によって発生していた応力は再分配されます。

つまり、外力が存在する限り支え続ける必要がある一次応力とは性質が違います。

ただし、「二次応力には自己制限性がある=熱応力はいくら高くても問題ない」という意味ではありません。

配管設備は、停止→加熱→運転→冷却→停止という温度変化を繰り返します。

熱膨張による応力が繰り返し作用すれば、疲労損傷が問題になります。

このため配管コードでは、熱膨張による応力を単純な一回の最大応力としてだけ見るのではなく、**Expansion Stress Range(変位応力範囲)**として評価する考え方が使われます。

一次応力と二次応力を比較するとこうなる

比較表: 一次応力と二次応力の違い

比較項目 一次応力 二次応力
英語 Primary Stress Secondary Stress
基本イメージ 力を受け続ける 動きたいのに拘束される
荷重の性質 Force-controlled Displacement-controlled
代表的なイメージ 自重・圧力など 熱膨張・強制変位など
変形による緩和 荷重そのものは基本的に残る 応力再分配・緩和が起こり得る
自己制限性 基本的に期待しない あり
主な破損モードとの関係 塑性崩壊など 疲労・ラチェット等との関係が重要
B31系解析で強く関連する区分 SUS EXP

注意ポイント

Primary StressとSUS、Secondary StressとEXPは、理解を始める際には強く関連付けられますが、完全な同義語ではありません。
Primary / Secondaryは応力の性質を理解するための概念であり、SUS / EXP / OCCは配管コードに基づく解析・評価上のStress Typeとして理解するのが安全です。

SUS・EXP・OCCとは?一次・二次応力とつなげて理解する

一次応力と二次応力の基本が分かったら、次は実際の配管応力解析で頻繁に登場するSUS・EXP・OCC・OPEを理解しましょう。

CAESAR IIでは、Stress TypeとしてOPE、SUS、EXP、OCC、FATなどが区別されています。Stress Typeによって、応力の計算方法や使用する許容応力が決まります。

初心者向けに大きく整理すると、次の関係になります。

自重・圧力など → SUS

熱膨張・強制変位など → EXP

地震・風など → OCC

実際の運転状態を再現する組み合わせ → OPE

SUSは自重・内圧などの継続荷重を評価する

SUSはSustainedの略です。

Sustainedには「継続する」「持続する」という意味があります。

配管では、自重や流体重量、圧力など、運転中に継続して作用する荷重の評価に関係します。

CAESAR IIの技術資料でも、SUSはSustained Caseとして区別されており、別の公式解説ではweightやpressureをprimary loadsとして扱っています。

初心者向けには、

SUS=配管がずっと支え続けなければならない荷重のチェック

と考えると理解しやすいでしょう。

ASME B31.3をCAESAR IIに実装した公式資料では、Sustained Stressの許容値として(S_h)、つまり評価温度に対応するHot Allowable Stressを用いる体系が示されています。

EXPは熱膨張・強制変位による「変化量」を評価する

EXPはExpansionの略です。

Expansionで重要なのは、熱膨張によって生じる応力を単純な「運転中の最大応力」として見るのではなく、状態間で生じる変位・応力の範囲として考えることです。

たとえば配管が、据付時20℃ → 運転時200℃まで加熱されるとします。

配管は20℃の状態から200℃の状態まで熱膨張します。

そのとき生じる変位の変化範囲からExpansion Stressを評価します。

CAESAR IIのApplication Guideでも、Operating CaseからSustained Caseを差し引いてExpansion Caseを作成し、据付状態から運転状態までのdisplacement rangeを使ってExpansion Stressを計算する例が示されています。

概念的には、

冷間状態

↓

温度上昇

↓

配管が熱膨張

↓

拘束によって曲げ・変位が発生

↓

冷間→熱間の変化範囲をEXPとして評価

という流れです。

OCCは地震・風など短時間の荷重を評価する

OCCはOccasionalの略です。

Occasionalとは「時折発生する」という意味です。

配管設備では、

  • 地震
  • 風
  • 一時的な外力

などの評価に使われます。

ここで初心者がよく疑問に感じるのが、

はてな

「地震は一次応力ですか?二次応力ですか?」

という問題です。

実務を理解する段階では、地震をPrimary / Secondaryのどちらか一方へ無理に当てはめて覚えるよりも、地震などの短時間荷重はOccasional LoadとしてSUSやEXPとは別のコード評価を行うと理解した方が整理しやすくなります。

CAESAR IIのB31.3実装資料でも、SUS・OCC・EXPは異なる許容基準で評価されています。

OPEは運転状態だが、そのままCode Stress判定するものではない

OPEはOperatingの略です。

Operating Caseには、実際の運転状態を再現するため、

  • Weight
  • Pressure
  • Temperature
  • Displacement
  • Force

などが組み合わされます。

CAESAR II公式資料では、Operating Caseにはweight・pressure・forceなどのPrimary Loadと、displacements・thermal expansionsなどのSecondary Loadの両方が含まれると説明されています。

Operating Caseは、実際の運転時に、

  • 配管がどちらへ動くのか
  • サポートにどれくらい荷重がかかるのか
  • 機器ノズルにどれくらい荷重が伝わるのか
  • 周囲の配管・構造物と干渉しないか

などを見るために非常に重要です。

しかしCAESAR II公式Helpでは、B31.1やB31.3などについて、OPEはCode Compliance Caseではなく、allowable stressを報告しないと説明されています。

つまり、

「OPEの応力が一番大きいから、OPEだけ見れば安全性を判断できる」

という考え方は適切ではありません。

規格上の評価は、SUS・EXP・OCCなど、荷重の性質に応じたStress Typeで行います。

一次・二次応力からSUS・EXP・OCCまでを1枚で整理

ここまでをシンプルにつなげると、次のようになります。

自重・圧力

↓

Force-controlled

↓

Primary Stressと強く関連

↓

Sustained

↓

SUS


熱膨張・強制変位

↓

Displacement-controlled

↓

Secondary Stressと強く関連

↓

Expansion

↓

EXP


地震・風

↓

短時間の荷重

↓

Occasional

↓

OCC

ただし、Primary / SecondaryとSUS / EXP / OCCは同じ分類体系の言葉ではありません。

Primary / Secondaryで荷重・応力の物理的性質を理解し、その後にSUS / EXP / OCCというコード評価へ進む

という順番がおすすめです。

なぜSUSとEXPでは許容値が違うのか?

SUSとEXPで評価方法や許容値が異なる大きな理由は、SUSとEXPでは荷重の性質と想定する破損メカニズムが異なるからです。

規格式だけを見ると難しく感じますが、

SUS=力を支え続ける問題

EXP=拘束された変位を繰り返す問題

と考えると理解しやすくなります。

SUSは塑性崩壊を防ぐ視点が重要

Sustained Loadは、自重や圧力などの継続荷重に関係します。

自重による力は、配管が多少変形してもなくなりません。

過大なForce-controlled Loadが存在し続ければ、配管は荷重を支えることができなくなり、塑性崩壊などにつながる可能性があります。

CAESAR IIのB31.3実装資料では、Sustained Stressについて概念的に、SL (持続応力) ≦  Sh(基本許容応力) となるよう評価する体系が示されています。

実際のB31.3のSustained Stress式には軸方向応力、曲げ、ねじりなどの規定が含まれるため、単純な「自重応力÷許容応力」だけではありません。

初心者の段階では、

SUSでは、継続的な力によって配管が荷重を支えられなくならないかを確認する

と理解しておけば十分です。

EXPは熱サイクルによる疲労も考える

Expansionでは、温度変化によるStress Rangeが重要になります。

プラント配管は一度だけ加熱されて終わるとは限りません。

たとえば、

20℃:停止

↓

200℃:運転

↓

20℃:停止

という温度サイクルを設備の起動・停止のたびに繰り返します。

配管はそのたびに、伸びる→戻る→伸びる→戻るという変形を繰り返します。

二次応力にはself-limitingな性質がありますが、繰返しによる損傷を無視できるという意味ではありません。

CAESAR IIに示されるB31.3のExpansion Allowableには**cyclic reduction factor (f)**が組み込まれており、繰返し回数を考慮する仕組みがあります。

CAESAR IIのB31.3実装では、たとえばExpansion Allowableについて、

SA=f[1.25(Sc+Sh)−SL]

という形の評価体系が示されています。

ここで重要なのは式を暗記することではありません。

SUSとEXPでは荷重の性質が違うため、同じ許容値で単純比較していない

という設計思想を理解することが重要です。

なお、B31.3の式・係数・適用条件はEditionや対象条件によって変更されることがあります。

実案件では必ず採用しているASME B31.3のEditionとプロジェクト仕様を確認してください。

Stress Ratio 100%の意味

配管応力解析ソフトではStress Ratioが表示されることがあります。

イメージとしては、

Stress Ratio = {Code Stress} / {Allowable Stress} ×100

です。

たとえば、

  • Code Stress:100 MPa
  • Allowable:120 MPa

なら、(100 / 120) × 100 ≒ 83.3% となります。

一般的には、Stress Ratio < 100%であれば、その評価ケースについて規格の許容範囲内です。

一方、Stress Ratio > 100%であれば、そのコード評価条件を満足していないため、配管ルートやサポートなどの設計を見直す必要があります。

ただし、

Stress Ratioが101%になった瞬間に配管が破断する

という意味ではありません。

Stress Ratioは、実際の破断応力に対する比率ではなく、規格で定められた評価基準・Allowableに対する比率です。

逆に、

Stress Ratioが99%だから配管システム全体が安全

という意味でもありません。

変位、サポート反力、機器ノズル荷重などの確認も必要です。

配管応力解析では応力以外に何を見る?

配管応力解析で重要なのは、Stress Ratioだけではありません。

実務では少なくとも、

  1. 配管変位
  2. サポート反力
  3. 機器ノズル荷重

を合わせて確認します。

JFEプラントエンジのAutoPIPEによる解析でも、応力だけでなく、配管の変位、サポート・支持構造物にかかる反力、接続機器への荷重を評価しています。

変位

高温配管では、数十mm、条件によってはそれ以上動くことがあります。

応力が許容範囲内でも、変位が大きければ、

  • 隣接配管との干渉
  • 鉄骨との干渉
  • サポートからの脱落
  • 伸縮継手の許容変位超過
  • ドレン勾配への影響

などの問題が発生する可能性があります。

Operating Caseは、このような運転時変位を確認するうえで重要です。

CAESAR II公式資料も、Operating Caseをhot displacementの確認や、運転時のrestraint・equipment loadを求めるために使用すると説明しています。

サポート反力

Rest、Guide、Line Stop、Anchorなどのサポートには、配管から力が伝わります。

解析結果では、

  • Restの鉛直荷重
  • Guideの横方向荷重
  • Line Stopの軸方向荷重
  • Anchorの三方向荷重・モーメント

などを確認します。

配管自体のStress Ratioが低くても、Anchor Reactionが極端に大きければ支持鉄骨や基礎を大型化する必要があります。

配管応力解析は、配管の健全性と支持構造物の健全性をつなぐ役割も持っています。

ノズル荷重

配管はポンプ、コンプレッサー、タンク、熱交換器などの機器に接続されています。

高温配管が熱膨張して機器を強く引っ張れば、配管応力が許容値以内でも、機器ノズルへの荷重が許容値を超える可能性があります。

そのため配管応力解析では、「配管自身は大丈夫か?」だけでなく、「配管が接続機器へ無理な力を与えていないか?」という視点が欠かせません。

サポートを増やせば安全、とは限らない

配管応力解析の面白さと難しさを象徴するのが、サポートのトレードオフです。

初心者のうちは、

「配管が動くならサポートを増やして固定すれば安全なのでは?」

と考えやすいのですが、熱配管では必ずしもそうではありません。

自重に対してはRestを適切に追加すると、配管のたわみや曲げモーメントを抑えられる場合があります。

地震に対しても、GuideやLine Stopなどで過大な移動を抑制することが有効な場合があります。

しかし熱膨張に対して拘束を増やしすぎると、

熱膨張を拘束する

↓

熱応力が上がる

↓

サポート反力が上がる

↓

機器ノズル荷重が上がる

ということがあります。

engineering-eyeの技術解説でも、サポートが少ないと熱応力は低減する一方、地震時の変形・応力が大きくなる可能性があり、両者のバランスを取ることが配管設計の役割だと説明されています。

AutoPIPEのユーザー事例でも、熱応力解析では拘束点を減らして応力集中を緩和したい一方、地震や風では拘束点を増やして変形を抑えたいという相反関係があり、サポート形状とサポート位置のバランスが重要とされています。

つまり配管サポート設計では、「固定するほど強い」ではなく、「必要な方向は拘束し、動かしたい方向は適切に逃がす」という考え方が重要です。

専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】:応力が高い場所を見つけても、すぐにAnchorやGuideを追加しないでください。まず「なぜ応力が高いのか」を確認することが重要です。

自重による曲げが原因なら支持点の追加が有効な場合がありますが、熱膨張によるEXPが原因なら拘束追加が逆効果になる場合があります。

配管応力解析では「応力を下げる」より、「配管をどこへ動かすか」を考える視点が重要です。

初心者が配管応力解析で間違えやすい5つのポイント

ここまでの内容を整理するため、初心者が特に間違えやすいポイントを5つ確認します。

1.一次応力=引張応力、二次応力=曲げ応力ではない

一次・二次という言葉から、

一次応力=引張

二次応力=曲げ

と思ってしまうことがありますが、これは適切ではありません。

ASMEの技術資料では、Primary / Secondaryは荷重の性質に基づく分類として説明されています。

一方、Membrane Stress、Bending Stress、Peak Stressは応力分布に基づく別の分類です。

つまり、

Primary / Secondary

と、

Membrane / Bending / Peak

は別の軸の分類です。

2.Primary=SUS、Secondary=EXPを完全な同義語にしない

初心者向けには、

Primary → SUS

Secondary → EXP

と対応させると理解しやすくなります。

しかしPrimary / Secondaryは応力・荷重の物理的性質を理解する概念であり、SUS / EXPは配管コードの解析ケース・Stress Typeとして使われる用語です。

CAESAR IIでもSUS、EXP、OCC、OPEなどを独立したStress Typeとして扱っています。

「関連が強いが同義ではない」と覚えてください。

3.熱応力が高い=すぐ破断ではない

Secondary Stressにはself-limitingな性質があります。

したがって弾性解析で高い熱応力が計算された場合でも、その値をそのまま「実際の破断応力」と考えるのは適切ではありません。

一方で、温度変化を何度も繰り返せば疲労などが問題になるため、熱応力を無視してよいわけでもありません。

「即破断ではない。しかし規格評価は必要」

という理解が重要です。

4.OPEの最大応力だけで判断しない

Operating CaseにはPrimary LoadとSecondary Loadの両方が含まれます。

そのためOPEは、実際の運転変位、サポート荷重、ノズル荷重などを見るうえで重要です。

しかしB31.1/B31.3系では、CAESAR IIのOPEはCode Compliance Caseではありません。

規格応力評価ではSUS・EXP・OCCなどを確認します。

5.サポートは多ければ多いほど安全ではない

サポートを増やすと自重や地震に対して有利になる場合があります。

しかし拘束点が増えると熱膨張の自由度が減り、熱応力・サポート反力・機器ノズル荷重が大きくなる場合があります。

配管サポートの目的は、「できるだけ動かさないこと」ではありません。

「必要な方向を拘束し、許容できる方向には適切に動かすこと」が重要です。

一次応力・二次応力から配管応力解析を理解する5STEP

配管応力解析結果を見るときは、次の5STEPで考えると整理しやすくなります。

step
1
どんな荷重が作用しているか確認する

まず、

  • 自重
  • 圧力
  • 温度
  • 強制変位
  • 地震

など、何が配管を動かそうとしているのか確認します。

いきなり応力値を見ないことがポイントです。

step
2
ForceかDisplacementか考える

荷重が、

力によって支配されるのか

それとも、

変位を拘束したことで生じるのか

を考えます。

自重はForce-controlledの代表例です。

拘束された熱膨張はDisplacement-controlledの代表例です。

step
3
Primary / Secondaryの性質を理解する

Force-controlledならPrimary Stressの考え方と強く関連します。

Displacement-controlledならSecondary Stressの考え方と強く関連します。

Secondary StressではSelf-limitingという性質も思い出してください。

step
4
SUS / EXP / OCCのCode Caseを確認する

次に解析ソフトで、

  • SUS
  • EXP
  • OCC

などのStress Typeを確認します。

OPEは運転状態の変位・荷重を見るうえで重要ですが、B31.1/B31.3系のCAESAR IIではOPEそのものをCode Compliance Caseとして扱いません。

step
5
応力・変位・反力・ノズル荷重をまとめて確認する

最後に、Stressだけではなく、

Displacement

Support Reaction

Nozzle Load

まで確認します。

配管応力解析の最終目的は、Stress Ratioを低くすることではありません。

配管・サポート・接続機器を含むシステム全体を成立させることが最終目的です。

配管応力解析に関するよくある質問

一次応力と二次応力では、どちらが危険ですか?

一次応力と二次応力は単純に「どちらが危険」と比較するものではありません。

一次応力はForce-controlledな性質を持ち、過大な状態では塑性崩壊などが問題になります。

二次応力はSelf-limitingな性質がありますが、温度サイクルなどによる繰返しでは疲労などが問題になります。

一次応力と二次応力では想定する荷重・破損メカニズムが異なるため、それぞれ適切な方法で評価します。

熱応力はすべて二次応力ですか?

拘束された熱膨張によって生じる熱応力は、Secondary Stressを理解する代表例です。

ASMEの公開技術資料でもThermal StressをSecondary Stressとして説明しています。

ただし実際の配管コード評価には詳細な応力式や荷重ケースの定義があります。

初心者の段階では、

「自由な熱伸びそのものではなく、熱伸びを拘束することで二次応力が発生する」

と理解することが大切です。

地震応力は一次応力ですか?

配管コードを実務的に理解する場合は、地震荷重を単純に一次・二次の二択で覚えるより、Occasional Loadとして評価すると理解する方が分かりやすいでしょう。

CAESAR IIでもOCCはSUS・EXPとは異なるStress Typeとして定義されています。

SUSと一次応力は同じ意味ですか?

完全に同じ意味ではありません。

Sustained Loadは自重・圧力などPrimaryなForce-driven Loadと強く関連するため、初心者がPrimary Stressを理解する際にSUSと対応させるのは有効です。

ただしPrimary Stressは応力の性質を説明する概念であり、SUSは配管コード上のStress Type・評価ケースです。

Expansion Stressが100%を超えると配管はすぐ壊れますか?

Stress Ratioが100%を超えたからといって、その瞬間に配管が破断するという意味ではありません。

Stress Ratioが100%を超えるということは、適用している規格の許容基準を満足していないことを意味します。

そのため、配管ルートの柔軟性を増やす、拘束条件を見直す、サポート位置を変更するなどの設計改善を行い、再評価する必要があります。

CAESAR IIとAutoPIPEは何をするソフトですか?

CAESAR IIとAutoPIPEは、代表的な配管応力解析ソフトウェアです。

配管モデルに自重、圧力、温度、強制変位、地震などの荷重条件を与え、変位・応力・荷重・反力などを計算します。

AutoPIPEについては、静的・動的荷重に対する配管応力解析システムとして、内圧・熱膨張・強制変位などを扱うことが紹介されています。

配管応力解析はすべての配管で必要ですか?

すべての配管について、必ず詳細なコンピュータ解析を行うとは限りません。

解析の必要性や評価方法は、

  • 適用規格
  • 設計温度
  • 配管径・肉厚
  • 配管ルート
  • 材料
  • 接続機器
  • 運転条件
  • プロジェクトの設計基準

などによって異なります。

ASME B31.3などの適用規格と、各プロジェクトの設計仕様・解析基準に従って判断してください。

まとめ|一次・二次応力が分かれば配管応力解析の全体像が見えてくる

配管応力解析は、難しい数式を暗記するところから始める必要はありません。

最初に理解したいのは、

「配管に何が作用し、配管がどちらへ動こうとして、その動きを何が拘束しているのか」

という物理現象です。

今回のポイントを整理します。

  • 一次応力(Primary Stress)はForce-controlledな荷重と関係する
  • 二次応力(Secondary Stress)はDisplacement-controlledな荷重と関係する
  • 拘束された熱膨張はSecondary Stressを理解する代表例
  • Secondary StressにはSelf-limitingな性質がある
  • SUSは自重・圧力などの継続荷重評価と強く関連する
  • EXPは熱膨張・強制変位などによるStress Rangeの評価と強く関連する
  • 地震・風などはOCCとして別枠で評価する
  • Primary=SUS、Secondary=EXPは完全な同義語ではない
  • OPEは運転変位・反力などを見る重要なケースだが、B31.1/B31.3系CAESAR IIではCode Compliance Caseそのものではない
  • Stress Ratioだけでなく変位・サポート反力・ノズル荷重まで確認する
  • サポートを増やせば必ず安全になるわけではなく、熱膨張とのバランスが重要

配管応力解析を理解する一番の近道は、応力値だけを見るのではなく、

荷重 → 変位 → 拘束 → 応力 → 規格評価 → 配管・サポート改善

という一連の流れで考えることです。

一次応力と二次応力の違いが理解できると、SUS・EXP・OCCという解析結果も、単なるアルファベットの記号ではなく「何を確認しているケースなのか」が見えてきます。

そして配管応力解析の本当の目的は、単にStress Ratioを100%以下にすることではありません。

配管を必要な方向には支えながら、熱膨張させたい方向には適切に動かし、配管・サポート・接続機器のすべてを成立させること。

この考え方が、配管応力解析を実際の配管設計へつなげる第一歩です。


次に読みたい記事

二次応力の代表例である熱膨張をさらに理解したい場合は、「配管の熱膨張を実例計算|ΔL=αLΔTから熱応力まで解説」で、熱伸び量の計算から、自由膨張と完全拘束の違い、熱応力まで順番に確認すると理解が深まります。

配管の動きをコントロールするサポートについて理解したい場合は、「プラント配管サポートの基本|Rest・Guide・Line Stop・Anchorの違いを解説」へ進むと、配管応力解析 → 熱膨張 → サポート設計が一本につながります。


参考資料・技術資料

本記事の技術的な整理では、以下の資料を主要な参考情報として使用しています。

  • ASME「DAY 02 - BPV III and NQA Workshop」
    Primary Stressをforce-controlled、Secondary Stressをdeformation-controlledかつself-limitingとして説明しているASME公開技術資料。
  • Hexagon「CAESAR II Users Guide – Stress Type」
    OPE・SUS・EXP・OCC・FATなどのStress Typeと、OPEがB31.1/B31.3ではCode Compliance Caseではないことを確認。
  • Hexagon「CAESAR II Users Guide – B31.3」
    B31.3におけるSustained、Expansion、Occasionalの応力許容体系を確認。
  • Hexagon「CAESAR II Applications Guide」
    Operating Case、Sustained Case、Expansion Caseとdisplacement rangeの関係を確認。
  • JFEプラントエンジ「配管の熱応力解析技術(AutoPIPE)」
    配管応力だけでなく変位、サポート反力、接続機器荷重を評価する実務的な解析対象を確認。
  • 伊藤忠テクノソリューションズ engineering-eye「設計規格による配管系の応力解析の基礎」
    自重・熱膨張・地震と配管ルート、サポート設計のトレードオフを確認。

技術上の注意

ASME B31.3の規定・計算式・係数はEditionや適用条件によって変更される場合があります。本記事は配管応力解析の基本概念を初心者向けに解説することを目的としており、個別案件の設計判断を代替するものではありません。実案件では、採用しているASME B31.3のEdition、プロジェクト仕様書、設計基準および使用する解析ソフトウェアの公式資料を確認してください。

 

  • この記事を書いた人

KAIJI

プラント配管設計に20年以上従事、配管レイアウト設計、配管サポート設計、配管応力解析、機器ノズル荷重評価、JIS/ASME規格を用いた設計、 若手エンジニアへの設計指導などの経歴あり。 【エンジニアの知恵袋】は、これからはじめてプラント設計に従事する初心者や、もっと知識を深めたい中堅者向けに有益な情報を発信する専門サイトです。

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